日本の演歌

 ショパンの舟歌、チャイコフスキーの舟歌、ボルガの舟歌、八代亜紀の舟歌を聴いてみた。優雅なリズムのショパンの舟歌、感傷的で美しいメロディのチャイコフスキーの舟歌、力強いボルガの舟歌、どれもすばらしいが、八代亜紀の舟歌が最も心を和ませてくれた。

 なぜなのだろうか。それは心にしみる歌詞、物悲しい曲が日本人である自分の心にフィットしているからであろう。演歌も捨てたものではないが、「津軽海峡冬景色」以降、日本の演歌は消え去った気がする。物欲が心の機微を消し、法が情を追い出し、幸福の追求が不幸を導いたのであろう。

 しかし、もしそうならば、なにも嘆くことはない。その解決は意外に簡単である。物欲を捨て、幸不幸を論ぜず、自分の心に忠実であればよい。日本人全員が「世の中を洗濯する」などと評論家ぶらずに、まずは「自分の心を洗濯する」ことであろう。