臓器移植

 平気でウソをつくのが人間である。自分のため真顔でヒトを騙すのが人間である。もしあなたが一生の伴侶を決める場合、あなたは相手の愛情の真意をどのように判断すればよいのだろうか? 
「私、腎臓が悪いの、このままだと、いずれ血液透析か腎臓移植と言われたの。もしそうなったら、あなたの腎臓をもらえますか?」多分、この返答次第で愛情の浅深が分かるはずである。
 臓器移植の進歩で、腎や肝の疾患で死ぬ患者はありえないが、現実には腎不全や肝不全で多くの患者が亡くなっている。それは医師が家族を説得しても、自分の臓器を愛すると称する伴侶に移植することに同意しないからである。もし死を前にした患者が、家族のこの態度を知ったら、どうなると思うか。必ず遺産相続で揉めることになる。口では家族愛などと言っても、相続目当ての偽装愛情が現実なのである。
 ちなみに、私は「もしお前の肝臓が悪くなったら、私の肝臓を半分あげるよ」と妻に言ったら、「汚れた肝臓は入りません」と断られてしまった。妻を愛しているつもりであったが、ああ無情、これもまた現実なのであろうか。