ヒポクラテス

ヒポクラテス
 「ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか」、これは野坂昭如が歌ったサントリーウイスキーの有名な広告の歌い出だしである。当時は、酒を飲みながら人生を語り、スケベしか頭にないのに恋愛論を戦わせ、まさに童貞肉食青年の青春時代であった。ご存知のようにソクラテスやプラトンは古代ギリシャの哲学者であるが、忘れてはいけないのはヒポクラテスの存在である。ヒポクラテスは「ヒポクラテスの誓い」で知られるように医学の象徴であり、彼の杖は世界的に医療の象徴として広く用いられ、日本医師会のシンボルマークにもなっている。また「病気は人間が自らの力をもって自然に治すものであり、医者はこれを手助けするものである」との名言を残している。
 しかしそれ以上に、ヒポクラテスは「ドレミファソラシド」を発見した音楽の神様ともいえる人物である。
 ある日、ヒポクラテスが散歩していると、鍛冶屋が打つ音の違いに気づいた。ある時は心地よく、ある時は不快に感じたのである。なぜか? ヒポクラテスは鍛冶屋に入ると、それは槌(つち)の重さによる違いであることが分かった。槌の重さを1:1.25:1.5:2倍に軽くした場合、同時に打てば心地よく聞こえたのである。これが「ドミソド」の発見であった。これは槌の重さだけでなく、弦の長さでも同じであった、弦を1:1.25:1.5:2倍に短くすれば「ドミソド」を奏でたのである。ヒポクラテスはこれを発展させ、「ドレミファソラシド」だけでなく、長調、短調、和音を作った。ギリシャ哲学は美術においても8頭身や黄金律を見出し、宇宙の原理を数学で証明したのである。
 著者は医学をかじり、音楽を奏で、密かにヒポクラテスの生まれ変わりを自認している。なお生まれ変わりは、ヒポクラテスが生と死について考えた哲学の結論で、わが国では弥生時代のころである。