サティー「ジムノペディ 第1番」

新しい音楽のかたち

静けさにみちたシンプルな音楽が

クラシックの新しい可能性をひらいた!

 

酒場でデビュー

6歳のとき、教会のオルガニストから音楽の手ほどきを受けたサティーはすぐに才能をあらわし、13歳にしてパリ音楽院に入学。音楽家のエリートコースを歩み始めます。 しかしサティーはクラシック音楽の伝統と形式に偏った教育に、息苦しさを感じて逃げ出してしまいます。自分のやりたい音楽は、どうしたら実現できるのか…さまようサティー青年が流れついたのがモンマルトルの街。芸術家や詩人が集う酒場でピアニストとして働き始めます。モンマルトルの自由な空気は、サティーの創作のエネルギーとなりました。こうして自分の居場所をみつけたサティーはいきいきと作曲を始め「ジムノペディ」を書き上げたのです。

 

日常の音楽

「ジムノペディ」は第1番から第3番まで3つの曲から成ります。この3曲、楽譜を見るとそっくりなのです。すべての曲が同じ速さ・リズム。ひたすら反復のなかを漂うメロディーが続きます。サティーがこの曲で行ったのは「展開しない」「終わりのみえない」音楽を作ることでした。古典派やロマン派の音楽が好まれていた時代、サティーはそういった芸術性を追求したドラマチックな音楽に違和感を感じていました。そして正反対の位置から音楽をみつめ、まったく新しい音楽のかたちにたどり着いたのです。「人間の環境のなかで音楽は自然に存在するべきだ」と語ったサティーは、1920年にその思想をきわめた『家具の音楽』という曲を発表。サティーの思想は、やがて現在の環境音楽やBGMを生み出していったのです。

 

なんでもジムノペディ!

伴奏は、基本的にメジャーセブンというコードを使った2つの和音の繰り返しが続きます。ジャズやポップスによく使われる、お洒落で現代的なコード。この伴奏が実はものすごく支配力をもっているのです!「ジムノペディ」の伴奏に他の曲のメロディーをのせると…あら不思議!なんでもジムノペディ風に!?とてもシンプルなのに強烈な印象を残すこの曲の空気を決定づけていたのは、メロディーを支える伴奏だったのです!