オルフ「カルミナ・ブラーナ」

オルフの“カルミナ・ブラーナ”

 映画やテレビでよく耳にする今日の名曲「カルミナ・ブラーナ」。

中世の古い詩を元にした歌詞と作曲家オルフの原始的ともいえる

力強い音楽。この曲が発表されたのは、1937年のドイツ。

ヒトラーの独裁体制時代だ。

歴史の荒波にもまれつつ、現在も頻繁に演奏されるこの曲の魅力に

せまる。

 

よみがえる中世の詩

「カルミナ・ブラーナ」とは1803年、ドイツの南部にある修道院から発見された詩集の名前である。中世時代の若い僧たちの心の叫びがつづられていた貴重なこの詩集。全部で250余りある詩の中からオルフが24編を選び完成させたのが「カルミナ・ブラーナ」なのだ。

もともとギリシャ時代の演劇が大好きだったオルフは、当時のヨーロッパの音楽には少し違和感をもっていた。そこで、より原始的で力強い音楽を求め、仕上げたのがこの曲なのだ。

 

オルフ自身の再生の歌

オルフはドイツ南部の都市、ミュンヘン出身。18歳で最初のオペラを書くなど早くから才能を開花させていた。しかし、22歳の時に第一次世界大戦に従軍、戦場で生き埋めになって生死をさまよった。 戦後は子供の音楽教育に携わりながら作曲活動を再開。1936年に「カルミナ・ブラーナ」を作曲する。

しかし、当時のドイツはヒトラー率いるナチスの時代。「カルミナ・ブラーナ」の歌詞には権力への批判のような内容も含まれており、作品を発表するのには細心の注意が必要だった。結果、初演は大成功。オルフは、初演の日に次のように語ったという。

「これまでの私の作品は全て処分してください。カルミナ・ブラーナこそ私の出発となる作品です。」

戦争体験やナチスの支配する厳しい時代を生き抜いたオルフにとって、「カルミナ・ブラーナ」は本人自身の再生のきっかけとなる作品でもあったのだ。

 

たかが繰り返し、されど繰り返し

「カルミナ・ブラーナ」の音楽的な特徴は何と言っても繰り返されるメロディと力強いリズムだ。今回の美濃さんの解説コーナーで、メロディの繰り返し以上に注目したのがベースを刻む音だ。このベースを刻む音が極めて印象的であるため、多少メロディが違ってもそのインパクトの強さが変わらないことを紹介。

さらに、打楽器のリズムが最初から最後にかけてどんどん細かくなることによる、高揚感や切迫感をゲストの渡辺徹さんと衣良さんが楽器で体感。繰り返しといってもただの繰り返しでは終わらないオルフの技のすごさを紹介。