ムソルグスキー「展覧会の絵」


響け!民衆の魂

「展覧会の絵」はかつては忘れられた曲だった

名曲に込められた熱い思いとは?

 

忘れられた原石

オーケストラのサウンドでよく知られるこの曲はアレンジされたもの。もともとはピアノ曲でした。今から140年前、ロシアの作曲家ムソルグスキーがとある展覧会を訪れ、そこで刺激を受け作曲。絵をもとに書かれた10曲が集まった組曲です。しかし、作曲したムソルグスキーはこの曲を発表しませんでした。そして、作曲からおよそ50年。1922年オーケストラの魔術師・ラヴェルがオーケストラに編曲。世界的に知られる曲となっていくのです。そして、ジャンルを越えロックやポップスにもアレンジされ、その数は100を超えていると言われています。忘れられた原石がさまざまな人によって磨かれ、輝きを増した曲。それが「展覧会の絵」なのです。

 

民衆の中へ

ロシアの大地主の息子として生まれたムソルグスキー。田園風景の中で働く農民を目にし、民謡や民話を聞いて育ちました。士官学校へ進み、青年将校となりますが、音楽だけに生きたいと軍隊をやめます。当時のロシアは、圧政に苦しむ農民たちが貧困にあえいでいました。そんな中、知識人たちは、民衆の生活の中に芸術を求めるようになりました。やがてムソルグスキーも、「ロシアの民衆を音楽で描きたい」と強く思うようになります。そして訪れた展覧会にインスピレーションを得て、ロシアの魂、民衆の姿が描かれた組曲「展覧会の絵」を完成させたのです。

 

ロシアの魂ここに

「展覧会の絵」にはロシアの民衆を描くために、さまざまなロシア的な要素が盛り込まれています。

① 「ロシア民謡」

ロシアの人なら誰でも知っている民謡「栄光あれ」を引用

② 「ロシア民謡の合唱法」

ロシア民謡の独特の合唱法、ソロが歌い、同じメロディーを合唱が歌うというスタイルを、曲の始まりに使用。

③ 「民衆の魂」

ロシア正教会の鐘のさまざまな表情を、ピアノで表現。