マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」


カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲は、ゆったりと流れるような甘い旋律。

でもその物語は、ゴシップ記事に出てくるような男女間の出来事が展開。作曲者マスカーニのねらいは…

 

“ゴシップ”で空前の大ヒット

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、嫉妬や不倫、復しゅうなど、もつれた男女関係が描かれた、いわば、ゴシップ記事に出てくるような内容です。舞台は、イタリア南部のシチリア島。島で実際に起きた、2組の男女の恋愛の悲劇がモデルになっているといわれています。恋人がいるのに人妻と不倫の恋をした男が、その妻の夫と決闘し殺される…という物語。日常生活で起こりうる現実的な出来事を題材にしたオペラは、“ヴェリズモ・オペラ”と呼ばれ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、その先駆けをなす代表作で、それまでのオペラをがらりと変えてしまいました。1890年、ローマの歌劇場で行われた初演では、聴衆が興奮のあまり叫び出し、何とカーテンコールは60回。オペラ史上類を見ない大ヒットとなりました。

 

ネタ元は俺!超“ヴェリズモ人生”

「法律家になれ」という父親に背いて音楽の道へ進んだマスカーニ。ミラノの音楽院では校則で禁止されていたアルバイトに精を出し、それをとがめた院長に逆ギレして音楽院を中退。その後は、イタリア各地を巡業するオペレッタ一座に入団。巡業先ナポリで出会った女性と恋に落ち、結婚前に子どもを授かります。さらに別の巡業先で出会った市長から「娘の音楽教師になってほしい」と言われ、オペレッタ一座から脱走…と、やりたい放題。自分にうそがつけなかったマスカーニは、“ヴェリズモ”を地でいくような男でした。

 

ハートをぎゅっ!“ユニゾン・パワー”

「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲の安らかな旋律は、その後に起こる決闘や死別など悲劇の結末を際立たせます。間奏曲の置きどころは、聴衆の心をつかむ上でとても大切なポイントです。そしてもう一つ、この間奏曲自体にも、心をつかむ効果が含まれています。曲の後半は、第1・第2バイオリン、ビオラ、チェロの4パートが一斉に同じ旋律を奏でる「ユニゾン」になります。シンプルながらも重厚な響きを生み出す「ユニゾン」の効果によって、間奏曲がより印象深いものになっています。