メンデルスゾーン「結婚行進曲」

幸せのおすそわけ

結婚式の定番「結婚行進曲」誕生にまつわる、「幸せ」なエピソードをご紹介します。

「幸せ」な季節から生まれた物語とは?人もうらやむ「幸せ」をつかんだ音楽家とは?

聞いて、見て、納得の、「幸せ」なブライダル・ミュージックです。

 

 結婚行進曲

ハッピー ジューン ブライド

ヨーロッパの6月は、光り輝く美しい季節。待ち望んだ太陽の到来に、花は一斉に咲き乱れ、人々も全身で喜びます。夏至の頃には、太陽と自然の恵みに感謝するお祭りが、ヨーロッパ各地で行われています。お祝いムードに溢れたこの美しい季節に結婚する花嫁は、生涯幸せになれるというのが、「ジューン・ブライド」の由来とも言われています。また神秘的な雰囲気に包まれる夏至の夜には、妖精たちが人間の世界に姿をあらわし、事件を巻き起こすという伝説があります。その伝説をもとにイギリスの劇作家シェークスピアが書いた喜劇が「夏の夜の夢」です。そんな物語の虜になった人物が、作曲家メンデルスゾーン。彼は「夏の夜の夢」を上演するための音楽を作曲しました。その中の1曲が「結婚行進曲」なのです。

 

幸せな結婚への長い道のり

メンデルスゾーンは、1809年、ドイツの裕福な家庭に生まれました。厳格な父親は、名門メンデルスゾーン家の長男に、家で徹底的な英才教育を受けさせたのです。朝5時に起きてから夜眠るまで、食事以外に休みはなし。あまりの過密スケジュールに、幼いメンデルスゾーンは、横になればいつでも眠れる、という特技を身に着けたといいます。そんな厳格な実家を窮屈に感じていたメンデルスゾーンは、次第に実家とは正反対の暖かく穏やかな家庭に憧れるようになりました。しかし、結婚を考えるような歳になっても、理想の高さが邪魔をして、いま一歩結婚まで踏み込むことが出来ません。そうして、婚期を逃しかけていた27歳のとき出会ったのが、セシル・ジャンルノー。家庭的で、柔らかい雰囲気を持つこの女性に、すぐ、恋に落ちてしまいました。出会って4ヶ月で婚約。その半年後には結婚式を挙げたのです。この幸せな結婚は、メンデルスゾーンに活力を与え、仕事も充実しました。「結婚行進曲」は、そんな幸せな結婚から7年後に生まれたのです。

 

幸せを呼ぶファンファーレ

「結婚行進曲」の名曲ポイントは、幸せなメロディーの前にあるファンファーレにあり。「夏の夜の夢」の中でトランペットを3本使うのは「結婚行進曲」だけ。3本のトランペットで作り出すドミソの和音は、聞き手に祝祭的なイメージを与えます。さらに、幸せなメロディーに向けてたたみ掛けるような三連符が、幸せへの期待感を後押しします。シンプルかつ奥深いファンファーレを、東京フィルハーモニー交響楽団のトランペット奏者をスタジオに迎えて解説します。