セレナーデ

 このパレエに物語はない。あるとすれば「月明かりの中のダンス」である。パレエの実際のレッスン中に起きた出来事がい盛り込ま れている。最初のレッスンに現れたのは女子17名で、 この人数で始まり、途中から男子が現れたので男性のパー卜も作られた。倒れて泣きくずれた生徒や、遅 れてきた生徒のエピソード などもさりげなくバレエの流れの中に取り入れられ、ドラマ性を感じさせる。

 幕開きの女性17人のコール・ドパレエ。音楽によって生命を吹き込まれたように、躍動していく。 

1、青白い衣装をつけた17人の女性舞踊手たちが右手を上げて佇んでいる。 弦の音色によって、生命を吹き込まれたかのよぅに励き始める。アンダンテの音楽が、途中から アレグロに変わり、踊りのスピ ードが増して行く。再び全員が並び最初のポーズ。遲れてきた 一人の女性のもとへ男性が近づいてくる。

2、ワルツ:一人は、軽快なワ ルツのリズムに乘って、心地良 さそうに踊り始める。群舞は、 『ジゼル』のよぅに幻想的。

3、ロシア的主題:哀愁を带びたメロディーで、5人の女性舞踊手が手をつないで踊る。女性ソリストが手をつないで踊る。女性ソリストを追うように男性ソリストがこれに続く。爽快な群舞が舞台を盛り上げる。

4、エレジー:倒れている女性 ソリストのもとに、男性ソリス トと、その背後に隠れた「天使」 のような女性が現れる。夢を見ているような幻想的な光景が続く。再び「天使」が現れ、男性を連れ去つてしまう。後に残つ た性ソリストが、高々とリフトされ幕となる。

 パレエでは、原曲の第3楽章と第4楽章が入れ替わつている。 これは最後をメランコリックにしたいという振付家の意向によるものである。

みどころ

 この作品はパレ工学校の徒たちのために作られたもので、 パレ工の基本的パターンで構成されている。それがまるで音符がきらきらと輝かしい音色を奏でるように、別物に生まれ変わってしまう。まさに音楽と一体となったスピーディーなバランシン•バレエの醍醐味が味わえる。すらりとしたラインの女性舞踊手たちによる群舞の整然とした美しさ。各楽孝の芯となるソリストたちのデュエットやトリオが見ものである。とりわけ最終楽章で「天使」が現れ、一人の 女性が昇天してゆくラスト•シーンは深い余韻を残す。