瀕死の白鳥

瀕死の白鳥

 湖に浮かぶ一羽の傷ついた白鳥が、生きるために必死にもがき、やがて息絶えるまでを描いた小作品。この「瀕死の白鳥」は、ロシアのミハイル・フォーキンが1905年にアンナ・パヴロワのために振り付けたバレエ作品。音楽は、フランスの作曲家サン=サーンスによる組曲「動物の謝肉祭」の「白鳥」が用いられている。ミハイル・フォーキンは、サンクトペテルブルク出身のバレエダンサー・振付師。

 アンナ・パヴロワ(1881-1931)は、20世紀初頭のロシアを代表するバレリーナ。18歳で1899年にサンクトペテルブルクバレエ団(現マリインスキー・バレエ)に入団し、「ジゼル」の主役で大成功を収めた。ロシア革命の騒乱を逃れて1912年にイギリスのロンドンに移住。その後は自前のバレエ団を結成し、世界中で活躍した。日本でも瀕死の白鳥を踊り、芥川龍之介も絶賛した。ツアー中にオランダのデン・ハーグで胸膜炎のために急死。彼女の名を汚さぬよう、「瀕死の白鳥」は以後20年間、誰も踊ることがなかった。