ボレロ

ボレロ

 ボレロはフランスの作曲家ボレロモーリス・ラヴェルが1928年にバレエ曲として依頼されて作曲した。演奏時間は10数分間であるが、同じリズムを最初から最後まで同じテンポで刻み、2種類のメロディを楽器を替えながら繰り返えしてゆくフルートの弱々しい旋律から始まり最後はトランペット中心の大編成の楽器隊が高らかにメロディを奏でる。曲の始めから終わりまで、しだいに高揚していく構成で人気を得ている。曲全体が巨大なクレッシェンドで表現されていて、「世界一長いクレッシェンド」の異名を持つ。

 バレエの演劇では「セビリアのとある酒場で、ある踊り子が舞台での足慣らしをしていると、だんだんノッてきて、最初はそっぽを向いていた客たちも、次第に踊りに目を向け、最後には一緒に踊り出す」というストーリーで演じられている。

  何人かの振付家がこのボレロの振付を行っているが、もっとも有名なのが映画「愛と哀しみのボレロ」のラストでジョルジュドンが踊ることでも知られているベジャール版で、ダンサーのジョルジュ・ドンの名前とともに世界的に有名である。

 ベジャール版のボレロは、舞台に置かれた赤い円卓の上で、一人のダンサーが何ものかに取り付かれたのように踊り、さらに周りのダンサーが一人、二人と踊り始める。ボレロの曲と同様に、同じような振付の繰り返しで、微妙に変化していくダンスが、音楽とともにしだいに激しさを増し、音楽とダンスが見事に一体化されている。このバレエは、中央で踊る一人をメロディと呼び、周りを取り巻く群舞をリズムと呼びます。初演当時は、中央のメロディを女性が踊り、周りのリズムを男性が踊った。

 一人の女に周りの男たちが扇情されるという設定だったが、ジョルジュドンがメロディを踊るようになり、中央を男性、周りを女性というパターンになり、更に、メロディもリズムも男性という形でも踊るようになった。

 ベジャールは自分のバレエを大事にして、自分が振り付けたバレエを踊るダンサーを厳選しているため、ボレロのメロディを踊れるダンサーは非常に限られている。ジョルジュ・ドンが圧倒的に有名であるが、それ以外には、マイヤ・プリセツカヤ、パトリック・デュポン、シルヴィ・ギエム。日本では、高岸直樹、首藤康之、上野水香が踊るようになった。