海賊

海賊
原作ジョージ・ゴードン・バイロン。初演1856年帝立オペラ座
バイロンの物語詩「海賊」を基にして、バレエ界でも様々なものが作られ、その中で最も注目を浴びたのがオペラ座のマジリエ作品である。

 

第1幕・第一場 (ギリシャの海岸)

 舞台は、ギリシャに面した地中海のイオニア海。海賊たちを乗せた船が嵐で難破し、三人の海賊、首領コンラッドとその友人アリとビルバントが島の海辺に打ち上げられる。浜辺ではギリシャ娘のメドーラとグリナーラが戯れいるが、ふと物陰に人が倒れているのに気がつき、そして首領コンラッドを助け起こした。その時、意識を取り戻した首領コンラッドと目が合い、2人は恋に落ちいってしまう。

 他の娘たちも倒れている海賊たちに駆け寄り介抱するが、トルコ兵が近づいて来るのが見えので、海賊たちを急いで物陰に隠した。トルコ兵は奴隷商人から金をつかまされ、人さらいの片棒を担いでいたのだった。メドラやギュリナーラたちはみんなつかまって奴隷市場へと引っ立てられて行った。それを物陰から見ていたコンラッドと海賊たちとは、メドラたちを取り戻すことを決心する。

第一幕・第二場 (奴隷市場)

 奴隷市場は奴隷を求める男たちで賑わっている。トルコの男たちは品定めをした後、奴隷商人と値段の交渉をしている。娘たちは自分たちの不幸な身の上を嘆く。

 奴隷商人ランケデムは美しいグリナーラをあちらこちらに連れ回して値段を釣り上げようとする。多くの客たちがグリナーラを欲しがり、大金持ちのパシャが大金を出して買いとった。メドーラも競売にかけられ取引が成立しようとした時、紳士に変装して追いかけてきた海賊の首領コンラッドが競売を張り合うふりをして、変装用の衣装を脱ぎ捨て正体を現しました。突然現れた海賊たちに客たちは大慌てで、混乱の中、コンラッドはメドラを抱きかかえ、海賊たちは財宝を奪い、奴隷商人ランケデムを捕らえて船に乗り込み悠々と海賊島へと漕ぎ出した。

第二幕 (海賊の洞窟)

 海賊たちは娘たちを連れ、奪った財宝を携えて意気揚々と洞窟へ帰って来た。奴隷商人ランケデムも連れて来られ、娘たちから罵声を浴び小突かれた。

 やがて宴が始まる。は楽しく盛り上がるが、奴隷市場から連れてきた娘たちをどうするかが問題になった。メドラはコンラッドに自分たちを解放してくれるように頼んだ。メドラがコンラッドに懇願すると、コンラッドは即断で娘たちの解放を決め財宝まで分け与えた。 しかし部下のビルバンドたちは大反対で、奪って来た財宝や娘たちはみんなで山分けにする決まりと主張し、短剣をかざしてコンラッドに向かってきた。しかしアリたち護衛にねじ伏せられ降参してしまう。

 屈服したものの、ビルバンドとその一味はおもしろくない。そして奴隷商人ランケデムは、縄を解いてくれたらいい復讐方法を教えてやる、ともちかけ、縄を解いてやるとランケデムはふところから眠り薬を取り出した。「眠り薬を花束に浸み込ませ、贈物だと偽ってコンラッドに渡し、眠ったらその隙にやっつけてしまえばいい、メドラは売り飛ばしてその代金を山分けしょう」と言うのだった。

 ビルバンドたちはこの話に乗り、きれいな花束を用意しすると、ランケデムは花束にたっぷりと眠り薬を浸み込ませ、コンラッドの寝室へと向かった。寝室ではコンラッドは平和な気持でメドラと愛に満ちた時間を過ごしていたが、そこへランケデムが現れ、贈物に見せかけてメドラに花束を渡しました。メドラは美しい花束にうっとりし、コンラッドも花束のよい匂いに惹きつけられ、顔を近づけてその香りを思いっきり吸い込んだ。その途端、コンラッドは気が遠くなって来て、そのままベッドに倒れこみ眠ってしまった。

 脅えるメドラの前に、ビルバンドとその一味、そしてランケデムが現れた。メドラは何とかコンラッドを起こそうと揺り動かすが、眠り込んだコンラッドが起きる気配はない。その時、ビルバンドがコンラッドに向かって短剣を振り下ろそうとしたので、メドラはコンラッドの上に覆いかぶさって庇いました。

 ランケデムは海賊たちの注意がそれてるのを利用してメドラをさらって逃げ出し、売却代金を独り占めしようと、そっとメドラを追いかけました。

 追いかけられたメドラはコンラッドが腰に帯びていた短剣を密かに隠し持ちながら、再びコンラッドを庇おうと、上に覆いかぶさりました。

 ビルバンドは再び邪魔になるメドラをコンラッドから引っ剥がしてコンラッドに斬りつけようとしましたが、メドラは勇敢にもビルバンドに向かって短剣を振り下ろし、手首に傷を与えました。ビルバンドや一味の者たちはメドラの思わぬ反撃にびっくりして騒ぎたてましたが、その隙に、今だ、とばかりにランケデムはメドラを抱え上げ、すたこらさっさと逃げ出してしまいました。

 謀られた、とばかりにビルバンドたちはランケデムを追いかけました。そこへ騒ぎを聞きつけた忠臣アリと護衛の者たちが駆けつけるが、メドーラはビルバント達に連れ去られた後だった。護衛の者たちはランケデムを追いかけて行きました。

 アリはコンラッドをゆすって起こし、ランケデムがメドラをさらって行った事を報告しました。コンラッドはたちまち真っ青になり、何としてでももう一度メドラを取り戻すぞ、と固く決心しました。

 

第三幕 (パシャのハーレム)

 ランケデムから奴隷としてメドーラ達を買ったトルコ総督パシャのハーレムでは、美女たちが華麗に舞っていた。グリナーラを買ったパシャの前にランケデムがやって来て、「新しい女性を手に入れたので、ぜひともお目にかけたい」と言う。ランケデムは焦らして値段を釣り上げるため、普通の娘たちを何人か連れて来た。

 ギュリナーラの美しさに慣れてしまったパシャは、買う気はないと断りました。ランケデムは次に美しい娘を三人連れて来て、娘たちに踊りを踊らせました。とても素敵な踊りでしたが、パシャは首を縦には振らない。それどころか、不機嫌に三人の娘たちを追っ払ってしまった。

 その様子を見たランケデムはヴェールを被せたメドラを連れて来て、パシャの前でもったいぶってメドラのヴェールを取り去りました。メドラを見たパシャは喜色満面です。思いがけず仲良しのメドラに再会したギュリナーラも驚いてしまう。

 そしてメドラ、ギュリナーラをはじめ、ハーレムの娘たちは総出でパシャに踊りを披露することになる。メドラが加わったハーレムの華やかさは格別です。感激したパシャは大喜びでランケデムに大金を払いました。

 その時、パシャにお伺いをたてに敬虔な巡礼の一団が現れ、パシャと共に祈りを捧げたがっていると言うのだった。お祈りと聞いたパシャはどうぞ、どうぞと巡礼たちを歓迎し、自らもひれ伏して祈りを捧げ始めました。巡礼のリーダーはコンラッドで、再びメドラを取り戻すために変装してやって来たのだった。

 メドラは大喜びでコンラッドに抱きついた。パシャは祈っているので気がつかず、パシャはただひたすら、ありがたや、ありがたやを繰り返す。その間に海賊たちは護衛の兵士たちを倒し部屋の外へひきずっていった。護衛は誰もいなくなり、コンラッドたちは衣を脱ぎ捨て正体を現しました。海賊たちは大暴れして財宝を奪い、再びランケデムを縛り上げて連れて行きました。

 こうしてコンラッドは愛するメドラを再び取り戻し、ギュリナーラも連れて悠々と引き揚げて行ゆく。そこに僧侶に変装したコンラッドと忠臣アリが潜入。乱闘の末、再びメド―ラとギュリナーラを助け出す。こうして二人の美女と共に、海賊コンラッド達は再び海に漕ぎ出していく。