ワーグナー恋物語

リヒャルト・ワーグナー 圧倒的な強さと才能の魔力 数知れない不倫愛

本名:ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー
出生地:ドイツ ライプツィヒ
生年月日:1813年5月22日
結婚:1回目 1836年(23歳) / 2回目 1870年(57歳)

  ワーグナーを一言で表現すると、「不愉快」という言葉が出てくるほど、その唯我独尊は天下一品だった。しかし悪い分だけ人を魅了する魔力というものが備 わっていたのか、バイエルン国王のルートヴィッヒ2世が彼に入れ込み、国がつぶれるほどの財をワーグナーに注ぎ込んだ。 ワーグナーだけの作品だけを上演するワーグナー劇場をドイツ北部のバイロイトに建設し、この劇場で毎年行われるバイロイト音楽祭は現在でも大人気で、チ ケットは10年待っても買えないくらいである。女性は基本的に大きな自信をもった強い男性に惹かれるもの。ワーグナーも性格が甚だしく不愉快だったにもか からず、数多くの女性を虜にしてきた。女性だけでなく王様をもひれ伏させたワーグナー、現在もその熱狂的な人気は衰えていない。

最初の結婚 ミンナ・ブラナー
  ワーグナーはこどもの頃から文学や音楽に強く興味を示し、ほぼ独学で音楽の知識を身につけ18歳から作曲を始めている。彼が23歳のときに、4つ年上のミ ンナ・ブラナーという女優と出会い猛烈なラブレターを送り結婚に至った。しかし、結婚7ヶ月めでミンナは浮気をし、その相手と駆け落ちしてしまう。不幸な 結婚の始まりは、ワーグナーを横柄にしてゆく。彼は借金を繰り返し、それを踏み倒し夜逃げする生活を繰り返えす。
そんなワーグナーはドレスデンで起きた革命デモに参加。ドイツ国家のブラックリストにその名を残し、逮捕寸前に逃亡した。そのときに世話になったのが、パリにいた音楽界の重鎮、リストだった。

ヴェーゼンドンク夫人 ヴェーゼンドンク歌曲集、トリスタンとイゾルデ
  逃亡中でも精力的に作曲を行っていて、彼の周りに数々のパトロンも現れた。パトロンは音楽家にとって大切な存在であるが、ワーグナーはパトロンの奥さんと 不倫を重ねる。そのうちの一人がヴェーゼンドンク夫人で、彼女との関係が続いている間に音楽史上に残る名曲を2つも創作した。それは不倫相手の名前を冠し た「ヴェーゼンドンク歌曲集」と悲恋のオペラ「トリスタンとイゾルデ」であった。この「ヴェーゼンドンク歌曲集」は5つの詩をベースに書かれているが、こ の詩はヴェーゼンドンク夫人が書いたもので、オペラ「トリスタンとイゾルデ」はヴェーゼンドンク夫人との秘め事を音楽で表現したとされている。
  ワーグナーはヴェーゼンドンク夫人に「最愛のきみよ!この巨匠はまた成し遂げた。たった今、幕の前半を通しで演奏したところだが、われらの愛する神が“良 しとされた”とお考えになったことを、私も考えずにはいられなかった」と手紙を送っている。自分ことを「巨匠」と書き、自己を神になぞらえるなど、なんと いう自信家であろう。ちなみに「トリスタンとイゾルデ」第1幕が完成したところで、ヴェーゼンドンク夫人との不倫が発覚、ワーグナーはチューリヒから離 れ、ヴェネツィアでオペラを書き続ける。しかもこのヴェネツィア滞在費も、不倫の妻の旦那ヴェーゼンドンク氏が負担していた。

コジマ-ニュルンベルクのマイスタージンガー、ニーベルングの指環
 ヴェーゼンドンク夫人とただならぬ関係になり始めた頃に、もう一人の女性に出会っていた。それがリストの娘であるコジマであった。初めて出会ったときは何もなく、コジマもリストの一番弟子であるハンス・フォン・ビューローと結婚した。
 この時期、ワーグナーはミンナと婚姻関係にありながら、ヴェーゼンドンク夫人と不倫していた。そんな中、ワーグナーの信奉者ビューローは、コジマとのハネムーン中にワーグナーの家を訪ねた。その場には、ミンナ、ヴェーゼンドンク夫人、そしてコジマも同席していた。
  ワーグナーはコジマとの再会で、すコジマの魅力にとりつかれ、ミンナ、ヴェーゼンドンク夫人との関係も冷め切ってしまった。コジマも、夫婦の関係がぎく しゃくし始め、ワーグナー50歳、コジマ20代半ばで二人は深い関係になった。コジマはワーグナーとの間に娘をもうけ、娘の名は「イゾルデ」と名づけられ た。ほどなくしてワーグナーの妻ミンナが病死。その後、コジマもビューローと離婚して、1870年、ワーグナーはコジマと再婚を果たす。
 そんな 状況の中で、ワーグナーとコジマは、ビューローとの三人での生活をしたとされている。さらにビューローはワーグナーの熱烈なファンであったので、指揮者と してワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」や「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の初演で指揮をするなど、普通の感覚では計り知れない複雑な関係に あった。そして、4つの独立した楽劇からなる連作で、4夜にわたって上演される壮大な作品「ニーベルングの指環」といった超大作を生み出していく。ワーグ ナーとコジマは普通の夫婦を超えた愛で結ばれ、ワーグナーは最期、心臓発作を起こしコジマの腕の中で息を引き取った。