ベートーベン恋物語

ベートーヴェン

惚れっぽく情熱的で風変わりな天才

年下女性と恋の数々
本名:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
出生地:ドイツ ボン
生年月日:1770年12月16日

音楽史上、最も偉大な作曲家の一人。バッハは神へその才能を捧げ、モーツァルトはパトロンに捧げたが、ベートーヴェンは芸術としての音楽を創るためにその人生を捧げたといわれている。あらゆる権力を嫌い、自由に生き、おしゃれには無頓着。おまけに頑固者で、潔癖症(コーヒーを淹れるときは自分で必ず60粒の豆を数えていれていた)、更には尊大な性格であったといわれている。
 あの鋭い目力とその類まれなる才能で数々の女性を虜にした。また音楽家ながらも難聴という問題を抱えていた天才を、女性たちは母性的なまなざしで見たのだろうか。女性は不思議なもので、ハンサムな出来すぎよりも、少々無骨でも才気溢れる自由な芸術家に惹かれることが往々にしてある。
 ベートーヴェンは恋多き男だった。しかもかなり年下のピアノの教え子だったことがほとんどであった。たとえば40歳のときに17歳の教え子に恋をする、そしてたとえ失恋しても、次々というタイプだった。多くの女性がいて、全員が全員とも年の離れた美しい女性であった。ベートーヴェンの肖像画を見ると、「常に恋をしていた」とはいい難い印象であるが、身近な友人は、「彼の人生において、恋人がいなかった時期がなく、たいがい高貴な身分の女性に熱をあげていた」と言くらいに情熱的に恋をしていた。ベートーヴェンは「自分の求める女性は美しくなければいけない。美しくなければなんにもならないのだ。そうでないと、ぼくは自分自身を愛するしかない」と言っていた。なおアントニア・ブレンターノとの恋の後は少し恋に落ち着いたのか、甥を養子にしてその子を溺愛した。そんような晩年に出来たのが第九だった。

多くの女性がいるが、ここでは4人の美しく高貴な女性との恋と名曲を紹介する。
1. テレーゼ・マルファッティ
2. ジュリエッタ・グイチャルディ
3. アントニア・ブレンターノ
4. ヨゼフィーネ・フォン・ダイム伯爵夫人

エリーゼのために テレーゼ
 ピアノ曲で最も有名な曲のひとつ。ベートーヴェンと懇意にしていた医者にはテレーゼという美しい姪がいて、ベートーヴェンはそのテレーゼとすぐに恋に落ちてしう。しかし身分が違うテレーゼとは結婚はおろか、恋仲になることも許されなかった。 この曲は、前半明るく楽しい雰囲気で始まるが、途中から物悲しく激しい曲調に変化してゆく。これは、テレーゼとの関係を表現しているとも言われている。また、テレーゼへの曲が「エリーゼ」になった理由は、ベートーヴェンの字が悪筆なため、秘書が読み間違えためだった。

ピアノソナタ第14番「月光」 ジュリエッタ
 1801年に作曲されたピアノソナタ第十四番「月光」は、ベートーヴェンの恋愛でも有名な曲である。当時、ベートーヴェンがピアノを教えていた伯爵令嬢のジュリエッタ・グイチャルディに捧げて作曲したが、失恋したというエピソードが残されている。「月光」の題名は、ロマン派の詩人ルートヴィヒ・レルシュタープによって後に付けられたもので、ベートーヴェンは「幻想曲風ソナタ」として発表している。この二つの題名をあわせて「月光ソナタ」と呼ばれることもある。

ピアノソナタ第30番ホ長調作品109/ピアノソナタ第31番変イ長調作品110/
ピアノソナタ第32番ハ短調作品111 アントニア
 ベートーヴェンの死後、さまざまな資料が発見されたが、そのうちの一つに不滅の恋人にあてた恋文があった。これは、誰にあてたか手紙かは解明されていないが、アントニア・ブレンターノという子持ちの既婚女性に宛てた手紙だったとされている。アントニアに出会う前は、ベッティーナという若く美しい女性と恋仲であったが、ベッティーナのお兄さん夫妻をベートーヴェンに紹介したところ、このお兄さんの奥さんであるアントニアに惹かれたとされている。不倫のようなそうでないような、はっきりしないが、ベートーヴェンが最も愛した女性の一人であったことは間違いない。ベートーヴェンが作曲した後期のピアノソナタの傑作は、「ブレンターノという主題でも良いだろう」と評されるほどであった。

交響曲第8番へ長調 ヨゼフィーネ
 不滅の恋人としてヨゼフィーネという女性もいた。この女性との間にベートーヴェンの隠し子説もある。実は、このヨゼフィーネとアントニアは同時期に身ごもっており、どちらもベートヴェンが父親かもしれないという噂があった。アントニアにしてもヨゼフィーネにしても、若く美しい女性に恋をしていた頃のベートーヴェンは、彼には珍しく明るくて楽しげな交響曲第8番へ長調を生み出した。これも恋のなせる業なのだろうか。