カバネル

アレクサンドル・カバネル(1823年〜1889年)は、フランスの画家。
 カバネルはエロー県モンペリエに生まれた。アカデミックなスタイルで、歴史、古典、宗教をテーマに絵を描いた。肖像画家としても有名だった。カバネルはアール・ポンピエの典型であり、フランス皇帝ナポレオン3世のお気に入りの画家だった。
 カバネルは17歳でエコール・デ・ボザールに入学した。フランソワ=エドゥアール・ピコについて学び、1844年、サロンに最初の出展を果たす。
 1845年には22歳でローマ賞を受賞。1863年にはフランス学士院のメンバーとなり、同年、エコール・デ・ボザールの教授に就任した。また、1865年、1867年、1878年と最高名誉賞を勝ち取った。このように、カバネルはパリ・サロンと密接な関係を持っていた。
 定期的にサロンの審査員に選ばれ、サロンの教え子も何百人といた。その教え子たちのおかげで、カバネルは、同世代の、ベル・エポック・フランス絵画の特徴を持つ他の画家たちより多くのことを為し得た。
 カバネルとブグローが印象派画家マネなどの絵をサロンで展示を拒否したことから1863年の落選展の騒動を招いた。
 成功したアカデミック画家として、カバネルが1863年に描いた『ヴィーナスの誕生』は、19世紀のアカデミック絵画で最もよく知られている。この絵はナポレオン3世が購入した。印象派とは表現も思想も正反対のところにある、この絵画は、印象派の殿堂ともいえるオルセー美術館に所蔵されている。

カバネル「ヴィーナスの誕生」(1875)
 アカデミズム絵画の最高傑作と謳われ、アカデミー主催の官展で絶賛され、フランス皇帝ナポレオン3世が買い上げた。アカデミズム絵画とは、フランス画壇 の最高権威である芸術アカデミーを支配した古典重視のの保守派閥である。聖書・神話が題材ならば、裸を描いても「神聖な美」と認められる伝統があった。

 ヴィーナスが泡から誕生した瞬間を、天使たちがほら貝を吹いて祝福している。ヴィーナスの美しく透き通るような白い肌と、金色に輝く髪が美しく、装飾や飾り立てがなくても、この神秘的瞬間が見事に演出されている。カバネルがアトリエの中で女性を描き、後から海を合成したため、ヴィーナスが波に対してどのように寝ているのか不可解になっている。

 印象派とは表現も思想も正反対であるが、この絵画は印象派の殿堂ともいえるオルセー美術館に所蔵されている。