アドルフ・ブグロー

ウィリアム・アドルフ・ブグロー(1825年〜1905年)はフランスの画家。19世紀フランスのアカデミズム絵画を代表する画家で、神話や天使、少女を題材とした絵画を多く残した。
  ブグローは1825年、フランス西部の大西洋に面した港町ラ・ロシェルで生まれた。1846年、パリへ出てエコール・デ・ボザール(国立美術学校)に学 ぶ。1850年にはローマ賞を得て公費でイタリアに留学し、同地に4年間滞在し、順調に画家としての地位を築く。1876年には美術アカデミー会員となり、1888年にはエコール・ デ・ボザールの教授に就任している。
 画風はアングルなどの新古典主義の流れを汲む伝統的なもので、キリスト教、神話、文学などに題材をとった構 想画のほか、肖像画を数多く残している。構図や技法はアカデミックなものだが、官能的な裸婦像、可憐な子どもの像、憂愁を帯びた若い女性の像などを得意としていた。甘美で耽美的な彼の画風は当時の人々の好みに合ったと見え、生前には彼の名声は非常に高かったが、20世紀以降、さまざまな絵画革新運動の勃興とともにブグローの名は死後忘れ去られていたが、1979年ころからやっと再評価されるようになった。

ウィリアム・アドルフ・ブグロー(1825年〜1905年)はフランスの画家。19世紀フランスのアカデミズム絵画を代表する画家で、神話や天使、少女を題材とした絵画を多く残した。
 ブグローは1825年、フランス西部の大西洋に面した港町・ラ・ロシェルに生まれた。1846年、パリへ出てエコール・デ・ボザール(国立美術学校)に学ぶ。1850年にはローマ賞を得て公費でイタリアに留学し、同地に4年間滞在した。1876年には美術アカデミー会員となり、1888年にはエコール・デ・ボザールの教授に就任している。
 画風はアングルなどの新古典主義の流れを汲む伝統的なもので、キリスト教、神話、文学などに題材をとった構想画のほか、肖像画を数多く残している。構図や技法はアカデミックなものだが、官能的な裸婦像、可憐な子どもの像、憂愁を帯びた若い女性の像などに独特の世界を築いている。甘美で耽美的な彼の画風は当時の人々の好みに合ったと見え、生前には彼の名声は非常に高かったが、20世紀以降、さまざまな絵画革新運動の勃興とともにブグローの名は次第に忘れられていった。再評価されるようになるのは20世紀末のことである。

ヴィーナスの誕生
1879年 カンバスに油彩 71.8 cm × 122.9 cm 
オルセー美術館(パリ)

 「ヴィーナスの誕生」は海からの誕生ではなく、完熟した女性として、海からキプロスのパフォスまで、貝殻にのって移動することを描いている。彼女はミロのヴィーナスと同様に古代ギリシア・ローマの女性の姿と美の最も精妙な表現であると見なされている。
 構図のみならず題材も、ラファエロの「ガラテイアの勝利」のみならず、サンドロ・ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」にも似ている。1879年のサロンのために製作され、この作品によってローマ大賞を受賞し、国家によってリュクサンブール美術館に購入され、現在、パリのオルセー美術館に保存されている。
 絵の中央では、ヴィーナスがホタテガイの貝殻のなかで裸で立っているが、その貝殻をイルカがひっぱっている。天使をふくむ15人のプットと、精霊とケンタウロス(馬の首から上が人間の半人半獣)らがヴィーナスの到着を待っている。ケンタウロスのうち2頭は巻き貝とトリトンのほら貝を吹奏して彼女の到着を知らせている。
 ヴィーナスは、女性の美とセクシュアリティーの具現化であると見なされている。その特徴は絵のなかに示されているように、ヴィーナスの頭部は片方に傾き、そして彼女の顔の表情は穏やかで、自分の裸に満足している。彼女は両腕を上に挙げ、大腿部までの褐色の髪をととのえている。彼女は揺れて優雅にS字カーブのコントラポストをなし女性らしい曲線を強調している。ブグローの円熟期の傑作として知られている。


姉妹たち

1901

アメリカ・ウィスコンシン州・ローレンス大学

 ブグローの数ある美少女の絵の典型が、この「姉妹たち」である。仲良し姉妹が、写真のスナップショット風に描かれている。眼が大きく、唇のふくらみが目立つ美少女たちで、姉はこちらに眼差しを向け、観るものとの感情交流を促すようなしぐさを示す一方、妹はあどけなく視線をそらしている。ブグローはアカデミック絵画における理想美とは趣を変えて、現実生活の中の、可愛く、可憐で、あどけない情景を、カンバスに描きとめている。

クピドとプシュケ

1889年 個人蔵

 この作品は神話から取材していますが、無邪気な子どもの情景として描かれている。愛(クピド)が魂(プシュケ)に求愛する寓話が主題である。幼い子どもたちの姿で描かれていますから、接吻を迫るクピドと恥ずかしげなプシュケは、いかにも微笑ましく、愛らしい情景になっている。アカデミック絵画の大御所の真の魅力は、このような大衆受けのする作画志向にあったと思う。