セックス

 日本の春画は性風俗を扱った絵画・浮世絵、つまりはエロ本である。春画は平安時代ごろから存在していたが、江戸時代になると盛んに描かれるようになった。当時の春画は自慰行為の他に、夫婦が一緒に見て笑ったり、女性を誘惑するときにも使われていた。春画は笑い絵とも呼ばれ、性描写と笑いが同居し、ユーモアでかつ芸術性の高い浮世絵である。その後明治時代に入ると写真の台頭によってしだいに春画文化が薄れていった。
 現在では春画は芸術作品として評価されているが、際どいエロを取り扱っているせいか、自主規制され、教科書に載らず、日の光を浴びていない。
 ちなみに葛飾北斎・喜多川歌麿・菱川師宣などの著名浮世絵師も春画を描いていた。童話作家・詩人の宮沢賢治は隠れた春画コレクターで、死後に大量に遺品として見つかった他、東京みやげとして後輩にも配っていた。
 蛸と海女(葛飾北斎作):一人の女が2匹のタコに攻められている絵。触手責めの発端とも言われる絵である。
 歌まくら(喜多川歌麿):男性と女性が性行為を行っている絵。
 2013年から2014年にかけて大英博物館で行われた 「春画 日本美術の性とたのしみ」は大きな話題を呼んだ。

 

 この地球上に人類が登場して以来、いつしか性行為に快楽が伴うようになった。それは多分、人間が正常位で性行為を始めた時であろう。哺乳動物の性行為はすべて後背位で、以前の人間も周囲に目を配りながら背向位のセックスであったが、人間の知能が発達し、日々の安全が確保されると性交は正常位になった。この正常位は筋肉、知覚神経、挿入の角度などのすべてが官能を生み、人間の体毛の消滅や乳房の発達は官能に貢献し、唇と歯はこの数千年の間にキスという行為に適合するようになった。太古の人間にデイープ•キスは不可能だった。男性器の勃起の角度、女性器の位置や膣の角度、すべて正常位に適合するようになった。こうして性が自然の生殖行為をこえ、官能的な経験が加わり、人間の願望がエロテイックな芸術を生んだ。

   ヴィレンドルフのヴィーナス

 今から3万年ほど前の旧跡時代の像、高さ 11.1 cmの女性で、1908年にオーストリアの旧石器時代の遺跡で考古学者ヨーゼフ・ソンバティが発見した。

 この女性像は「ヴィレンドルフのヴィーナス」あるいは「ヴィレンドルフの女」と名付けられ、豊かな乳房や腰が強調され、多産への願いが読み取れる。さらに肥満体は豊穣を示唆し、小さな腕は乳房の上でまとまっており、女性像には明瞭な顔面がない。頭部は組み紐の巻いたもの、頭飾りと考えられるもので覆われている。

 写実的な肖像ではなく、理想化された女性の姿である。当時の人々は、今日のような宗教や芸術という概念はなく、自分たちの生存や繁殖に向けての原始的で未分化な願いや祈りをこめて創られたのだろう。この女性の姿は「豊かさ」のイメージを私たちに語りかけてくる。

 原始人間像で世界的に共通なのは、そのほとんどが女性像で、女性は子供を産むという神秘性を持っていたからであろう。


 サーンアバスの巨人

 サーンアバスの巨人は、幅30 cmの線で画かれた巨大な裸の男性像である。長さ55 m、幅51 mで、巨人の右手には長さ36 mの巨大な棍棒が握られている。イングランドのドーチェスターの丘の斜面に刻まれており谷の向かい側からよく見える。

 青銅器時代のものと云われてきたが、最近になって、イギリス市民革命時に荘園領主の家来により作られたという説が有力である。

 地元の言い伝えでは、この丘で殺された巨人の死体をなぞったとされている。大きな睾丸と勃起したペニスが画かれているため、生殖の象徴とされ、現在でも子供を望むカップルが訪れる。