過労死

【過労死】 昭和63年(1988年)

 過労死とは、長時間の労働や仕事上のストレスが誘引となり、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞などの疾患を発症して死亡した場合をいう。つまり働き過ぎによる突然死が過労死であるが、突然死の原因を過労に求めることを疑問視する医師もいる。過労死は医学用語ではなく、「使用者が使用人の死に責任を負う」とする労災補償の考えから生まれた行政用語である。

 バブル景気が崩壊するまで、「日本人は働き過ぎ」と国際的に批判され、そのため労働時間の短縮や、企業による従業員の健康管理が強化され、過労死が注目されるようになった。欧米では、過労死に相当する用語がないため、「KAROSI」と報道されている。このように過労死は日本特有の封建的労働によるものであった。

 労務中の事故を労災と呼ぶように、過労死は労災補償との関連から問題になった。死亡の原因が業務上の過労によって生じたのであれば過労死であるが、死亡の原因が過労に起因するかどうかの判定が難しいのである。発病する前の1週間に、過重な業務があれば過労死と認められる可能性が高い。

 昭和63年までは、過労死の認定は申請された全体の1割程度であった。そのため遺族が救済されないケースが多かったが、昭和63年に「過労死110番」が47都道府県に設置され、労災申請の無料相談などが行われるようになり、次第に認定される数が多くなってきた。

 しかしそれでも過労死の基準は厳しく、遺族が救済されないことが多い。そのため労働省は、平成7年2月に従来の認定基準を緩和した新認定基準を設定した。また不整脈による突然死を、新たに対象疾病に加えることにした。

 平成8年3月28日、東京地裁が社員の自殺を過労によるうつ病が原因として、会社に1億2000万円余りの損害賠償を命じる判決を出した。それまでは、主に心血管系の病気が過労死の対象とされていたが、この判決により自殺が過労によるものであれば、過労死として認定されることになった。