笑気ガス医療事故

【笑気ガス医療事故】昭和62年(1987年)

 昭和62年12月22日から24日にかけて、佐賀県嬉野町(現嬉野市)の国立嬉野病院で、笑気ガス(麻酔ガス)を送る管と酸素を送る管が、逆につながれる配管ミスがあった。そのため手術を受けた女性(77)と小学4年生(9)が相次いで死亡した。患者は2人とも整形外科で簡単な手術を受けたが、麻酔を止めても意識は戻らずに死亡した。不審に思った病院が調べたところ、手術室の配管にミスがあり患者は酸欠で死亡したのだった。

 国立嬉野病院は病棟の改築で、第二手術室の横に機械室を移すため天井の酸素と笑気ガスの配管工事をしていた。この際、工事業者が2つの配管を間違えてつないだのであった。配管ミスはヒューマンエラーの典型であるが、病院側は完成後に義務付けられている検査をしていなかった。

 笑気ガスは麻酔薬で、酸素と混合して全身麻酔に使用する。「手術の初めは笑気ガスを多く酸素を少なくし、手術が終われば反対に酸素を多くする」。しかし配管を間違えたため、酸素を多くしたつもりが笑気ガスを多く流したのであった。この事故以降、笑気と酸素の「ボンベの差し込み口の形状を変え、ボンベも色分けする」ことになった。厚生省は、医療機関内に「医療ガス安全・管理委員会」を設置させ、ガス設備の保守点検や施工管理に責任を持つように通達を出した。