東京医科歯科大教授選汚職

【東京医科歯科大教授選汚職】昭和58年 (1983年)

 昭和58年、東京医科歯科大の第1外科教授選考に絡んだ贈収賄事件を、朝日新聞がスクープした。現金を受け取ったのは東京医科歯科大麻酔科教授・池園悦太郎で、現金を贈ったのは教授選に立候補していた畑野良侍(東京医科歯科大)と酒井昭義(東京大医科学研究所)の2人であった。

 教授選で便宜を図ってもらうため酒井は400万円、畑野とその支持者は200万円を池園教授に贈っていた。この汚職は、教授選に落選した酒井が金銭の授受の証拠テープを朝日新聞に持ち込んだことから発覚した。

 事件の取り調べが進むにつれ、医学部教授の巨大な権力を示す事実が続々と判明した。池園教授は、同大学の博士号の授与に関しても寄付金を要求し、他人のデータを盗んで論文を作成し、池園の妻が経営する医療機器会社の存在も明らかになった。捜査の過程で池園は医療機器販売会社から90万円を受け取っていた疑いで逮捕、11月に懲戒免職となった。

 医学部の教授は、人事や研究などを一手に握ることから、権力が絶大であったため、教授選で金銭が飛び交うことは、以前よりうわさされていた。今回、収賄罪として池園教授が逮捕されたが、ほかの教授も候補者から金銭を受け取っていたとされ、この事件は大学教授にまつわる金銭授受の一端をのぞかせたにすぎないといえる。

 昭和59年3月、東京地裁は、東京医科歯科大の教授選考などをめぐる収賄罪に問われた池園教授に執行猶予なしの実刑1年6カ月、追徴金690万円の判決を下した。贈賄罪の畑野良侍、酒井昭義も懲役を言い渡されたが執行猶予が付いた。

 判決では「大学の重要な自治活動である教授選を、わいろの授受によってむしばみ、さらに大学教授と業者の癒着が社会に与えた影響は大きい」とした。なお、厚生省の医道審議会は池園悦太郎に医業停止1年の処分を下した。その後、池園悦太郎医師は開業医として活躍している。