人工心臓データ捏造事件

【人工心臓データ捏造事件】昭和58年 (1983年)

 昭和58年12月6日、読売新聞は朝刊1面トップで人工心臓データの捏造事件をスクープした。広島大医学部人工心臓実験施設の田中一美教授が、人工心臓の実験データを捏造して、内外の学会で発表していたという内容であった。

 捏造は「広島大式補助人工心臓を牛に埋め込み、523日生存の世界新記録を達成した」というもので、米国の人工臓器学会で発表され、さらに体内埋め込み式人工心臓の115日間生存のデータも捏造されたものであった。

 田中教授のデータは、以前から記録に矛盾があるとして学会で問題になっていた。功名心のためなのか、研究費を稼ぐためなのか、実験データを捏造した理由は不明であるが、牛の生存記録は施設で働いている人ならすぐ分かることである。データを捏造するとは、よほど部下を信じていたのであろう。