ブタコレラ事件

【ブタコレラ事件】昭和42年(1967年)

 ブタコレラはブタに発症するコレラで、下痢や食欲不振、歩行困難などの症状が現れ、致死率は高いが人間には感染しない。このブタコレラの予防にはワクチンが有効で、ワクチンを作るためにはブタコレラ菌をブタに感染させて、ブタから血清を採る必要がある。

 コレラ菌を感染させたブタは焼却処分にされるはずであるが、正常なブタと偽装されて、食肉業者に1頭300円で密売され、ブタコレラ菌に侵された豚肉が食卓に並べられた。ヒトには無害ではあるが、この事件は全国の消費者に衝撃を与えた。

 この事件を引き起こしたのは、栃木県の日本ワクチン那須研究所であった。死亡した「感染ブタ」を東京都葛飾区の大真産業会社らが買い、肉屋に市価の3分の1の値段で売っていた。売られた感染ブタ7100頭のうち、524頭が回収され19人が逮捕された。

 この事件で豚肉の卸値は暴落、ハム、ソーセージも売り上げを落とした。事態を憂慮した政府は、佐藤栄作首相や閣僚が豚肉の試食会を行ったほどである。プリマハムも病菌ブタを使っていたとして営業停止処分を受けた。

 ブタコレラは、平成4年の熊本での発症を最後に、日本では撲滅されている。このため、平成12年からワクチンは使用されていない。この事件は大きな騒動となったが、その後さらに悪質な事件が起きた。病死した牛の肉は、販売が禁止されているが、昭和61年1月、栃木県内で病死した牛肉が宇都宮市内の食品店やレストランに売られていたことが発覚した。病死した牛の肉は動物の餌として売買されるが、それを食肉に転売した事件が摘発されたのである。