むち打ち症

【むち打ち症】昭和42年(1967年)

 交通事故の増加とともに、むち打ち症が社会問題となった。むち打ち症とは、首の骨をつないでいる筋肉や靭帯(じんたい)が自動車の追突事故などで損傷を受けることで、頸部ねんざ、頸椎ねんざとも呼ばれている。自動車を運転中に不意に追突されると、前のめりの状態から瞬時に背部の座席にたたきつけられ、その際、頸部を支えるヘッドレストがないと、空中でむちを振ったような衝撃が頸部に起きることによる。むち打ち症患者は、昭和41年だけでも全国で5万数千人に達し、昭和42年10月26日に全国むち打ち症被害者対策協議会が発足した。

 昭和43年12月、国立王子病院が中心になり、サルを用いた実験が行われ、脊椎を包む硬膜外に出血が見られ、頸椎よりも腰椎の障害が強かった。むち打ち症患者の約半数が性的不能と排尿障害を併発することから、むち打ち症は首だけの障害でないことが分かる。

 むち打ち症の症状は、首のしびれ、頭痛、めまいなどで、重症の場合は上下肢が麻痺することがある。また事故直後に痛みがなくても、時間が経ってから悪化することがある。症状によって治療法は異なるが安静が一番である。頭部を固定し、炎症が取れるまで冷やすのがよい。軽度のものは2〜3日、だいたいは2〜3週間で改善するが、自己判断せずに医療機関を受診して、外傷、骨折、脱臼の有無を調べることである。最近の車は、事故の衝撃を和らげるための衝撃吸収装置が取りつけられ、ヘッドレストやエアバッグ、シートベルトなどが普及し、むち打ち症の頻度は低下している。