犯罪と精神障害

【犯罪と精神障害】昭和34年(1959年)

 昭和34年1月31日、毎日新聞は少年院に収容されている少年の3割が精神異常者であると報道した。この報道は法務省矯正局が公表したもので、全国61カ所の少年院に収容されている9887人について調査結果であった。非行少年の3割が精神障害者で、1割が正常少年、残りの6割は異常と正常の間で準正常と分類された。

 犯罪と精神障害は極めて難しい問題である。それは精神障害の診断が確立されていないこと、精神障害者の犯罪という偏見を生みだすこと、さらに精神障害者は罪を犯しても刑罰が軽くなる減刑措置があったからである。

 平成11年の刑法犯検挙人員(交通関係業過失を除く)のうち、精神障害者は636人、その疑いのある者は1361人で、刑法犯検挙人員に占める比率は両者を合わせると0.6%である。この数値から精神障害者の犯罪率が高いとはいえないが、罪名別に比率を見ると、放火は14.4%、殺人9.4%が精神障害者で、重罪ほど割合が高いことがわかる。

 平成7年から11年までの5年間に、検察庁で不起訴処分とされた被疑者のうち、精神障害のため無罪となった者、心神耗弱を理由として刑を減軽された者は合計3629人となっている。罪名別では、殺人が726人(総数の20.0%)で最も多く、精神障害名では統合失調症(2134人、58.8%)が最も多くなっている。しかしこれらは、あくまで統計上の数値で、精神障害と犯罪についてはまだ明確でないとするのが正しいと思われる。