トラコーマ

【トラコーマ】昭和31年(1956年)

 昭和31年6月3日、虫歯、寄生虫、トラコーマの3大病・撲滅5カ年計画が学校を中心に開始された。トラコーマは伝染性の慢性角結膜炎で、撲滅運動が必要なほど感染力が強く、当時の人たちを悩ましていた。汚れた手やタオルなどによって感染者から接触感染した。

 大半は1歳から2歳の幼児期に感染し、長い潜伏期間を経て6歳から7歳頃に発症した。その症状は目やにや充血といった通常の結膜炎の症状で、多くは自然回復するが、1眼から他眼に伝染して失明する危険性もあった。

 眼瞼結膜にブツブツができるトラコーマは当時、「はやり目」の代表とされていた。トラコーマは最近ではほとんどみられないが、感染が減ったのは抗生剤の点眼ができたこと、国民の衛生状態が良くなったことによる。

 トラコーマはクラミジアによって生じる疾患である。現在、トラコーマは日本ではほとんど姿を消しているが、クラミジアは住む場所を変え、新たな問題を起こしている。それは性器クラミジア症で「性器のトラコーマ」となってひそかに流行している。

 何らかの理由で産婦人科を受診した10代女性の4人に1人がクラミジアに感染しているとされ、性感染症の半数近くを占めている。症状は極めて軽度で女性では8割、男性では5割が症状を示さない。しかし放置すると、女性の場合はクラミジアが子宮の奥に侵入して子宮内膜炎や卵管炎を起こすことがある。

 さらに、下腹部痛や不正出血、卵管内の癒着による不妊症、子宮外妊娠、腹痛の原因になる。女性の場合は自覚症状がなくても、出産時に赤ちゃんがクラミジアに感染し、新生児結膜炎やクラミジア肺炎を引き起こすことがある。