欠糖病

【欠糖病】

 終戦から昭和21年の秋にかけて日本の食糧事情は最悪となっていた。飢餓の時代には糖尿病の患者はほとんど見られず、それとは逆に糖不足からくる欠糖病患者が続発して話題になった。欠糖病は栄養失調の一種で、身体のだるさが主症状で、症状が進行すると意識を失う患者までいた。欠糖病の治療は簡単で、ひと塊の砂糖を与えるとすぐに回復した。この治療への反応性が良いことが欠糖病の大きな特徴であった。

 患者の多くは中年の男性であった。家族のために自分は食べ物を食べずに、妻子への食費を捻出するために働いていたからである。当時の医学の教科書には欠糖病の記載はあったが、欠糖病患者を診察した医師は少なかった。この欠糖病患者が多発していることを京大医学部・家森秀次郎助教授が朝日新聞に書いて話題となった。糖尿病に悩む現代社会では想像もつかない病気である。