東京慈恵医大生殺害事件

【東京慈恵医大生殺害事件】

 昭和21年7月10日の深夜零時頃、長野県北アルプス連峰の烏帽子岳登山口の山小屋で、宿泊中の東京慈恵医大予科3年生のパーティー4人が何者かに襲われた。学生たちは北アルプスの山開きに参加するため山小屋に泊まり込んでいた。寝込みを襲われた4人のうち原震治君(25)と助川佐君(22)が死亡、下城正雄君と関根栄三郎君が重傷を負った。

 犯人は熟睡している学生たちをこん棒で殴りつけたのだった。関根栄三郎君が血まみれになりながら、山小屋から50メートル離れた発電所の番小屋に転がり込むように助けを求め、発電所の職員が大町警察署に電話で連絡。非常線が張られ、事件発生から3時間後に犯人は現場から8キロ離れた笹平国有林で逮捕された。

 犯人は兵庫県の造船工・神川義春(24)と無職・斉藤和一(21)の2人で、東京慈恵医大パーティーの食糧を奪うための計画的犯行であることを自供。犯人たちは、事件の前日から登山をしている4人のパーティーに目をつけて後を追っていた。山小屋で学生たちと同宿、深夜になってこん棒で襲撃したのだった。米1斗と缶詰、学生らがリュックサックに入れていた食糧を狙っての犯行であった。犯人2人は長野地裁で死刑の判決を受け、昭和23年7月13日処刑された。