ジフテリア予防接種で死亡者続出

【ジフテリア予防接種で死亡者続出】昭和23年(1948年)

 昭和23年11月4日、京都市でジフテリアの予防接種を受けた幼児が、高熱などの症状を示し次々に入院した。患者数は935人、そのうち68人が死亡する壮絶な惨事となった。同月11日には島根県御津村でも248の幼児が発熱を訴え18人が死亡した。

 厚生省と京都市が調査した結果、ワクチンを製造した大阪日赤医薬学研究所が、ワクチンの製造過程でジフテリアの毒素を混入させていたことが判明した。ジフテリアの予防接種でジフテリアを引き起こしたのである。ジフテリア毒素は心臓、腎臓、神経系を障害するとされている。

 11月30日、GHQは予防接種の停止を指示。厚生省はすべての予防接種を取りやめ、厳格な製造規則を設定し、同種の事故の根絶に乗り出すことになった。当時の予防接種は強制接種で、拒否した場合は親に3000円の罰金が科せられていた。この国家による強制接種が被害をより悲劇的なものにした。

 ジフテリアは、かつては咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリア、鼻ジフテリアなどがあり、咽頭に偽膜を形成するため、息を吸うたびにゼーゼーと呼吸苦を訴え、窒息によって死亡し、あるいは心筋障害から死に至る恐ろしい疾患であった。現在では、破傷風、百日咳、ジフテリアの三種混合ワクチンによりジフテリアの発症はほとんどみられない。