潮来笠

 潮来笠(いたこがさ)は佐伯孝夫が作詞、吉田正が作曲した橋幸夫のデビュー曲で、股旅曲代表的な作品である。
 橋幸夫は昭和18年に東京都荒川区で9人兄弟の末っ子として生まれ、遠藤実、吉田正に師事。「潮来笠」でデビューし、同曲で第2回日本レコード大賞新人賞を受賞し、「第11回NHK紅白歌合戦」にも初出場を果たした。

 紅白歌合戦には17回連続場。後にデビューした舟木一夫、西郷輝彦とともに「御三家」として人気を集めた。吉永小百合とのデュエット曲「いつでも夢を」が30万枚以上を売り上げる大ヒットとなり、第4回日本レコード大賞を受賞した。1966年には「霧氷」で再び第8回日本レコード大賞を受賞。同賞ではいずれも史上初となる2度目の大賞受賞、新人賞と大賞の2冠を達成した。

 人気と実力を兼ね備えた若手ナンバーワンと注目され、映画にも多数出演している。昭和36年には本曲をモチーフにした同名の映画「潮来笠」が小林勝彦の主演によって公開された。

 茨城県潮来市は、霞ヶ浦と北浦との中間にある町で、古くから利根川水運の中心地、引手茶屋が並ぶ歓楽地として栄えていた。水郷の名で全国に知られ、詩人野口雨情が大正11年に「船頭小唄(おれは河原に枯れすすき〜)」で大ヒット以来。花村菊江が歌った「潮来花嫁さんは舟でゆく~」のように、水郷の町として多くの歌の舞台になっている。

 また潮来といえばあやめ、あやめといえば潮来、と言われるほど有名で、潮来市の「前川あやめ園」に本曲の歌詞が刻まれた歌碑が建てられ、さらに、映画「潮来笠」で橋が演じた潮来の伊太郎をモチーフとしたブロンズ像も設置されている。現在は、水郷情緒の地として大勢の観光客で賑わっている。