イヨマンテの夜

イヨマンテの夜

 「イヨマンテ」とはアイヌ語で「送り儀式」のことで、「熊祭り」の字を当てることが多い。NHKのラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の劇中の山男をテーマとした演奏曲として作詞菊田、作曲古関でつくられた。山男が「アーアー」と口ずさむだけのメロディだったが、ひとつの作品として残すことになった。レコード化にあたり、ドラマの脚本を書いた菊田が後から歌詞を加えた。当時、アイヌの作品を手がけていたため、アイヌ的な単語を当てはめて作った。「アーホイヨー」の歌い出しは雄叫びにも似て、伊藤久男が朗々と歌い上げる。リズム的にも大変難しく、男性的な歌謡曲の典型で、当時の『NHKのど自慢』では多くの男性出場者がこの曲を選択して審査員を困らせた。その後ののど自慢でも、長らく声量自慢の年配者が歌う姿が見られた。アイヌに題材を採ってはいるが、実際のアイヌの儀式や伝統曲とはかけ離れた面が多い。アイヌを題材にした歌謡曲としては他に映画版「君の名は」第2部の主題歌「黒百合の歌」がある。異教的な雰囲気など、両者には共通点が見られる。作詞、作曲は同じく菊田・古関コンビで、織井茂子の歌でレコード化された。