お富さん

お富さん
 作詞:山崎正、作曲:渡久地政信で、春日八郎の歌が歌い大ヒットした。
 歌舞伎の「与話情浮名横櫛」(通称:切られ与三郎)からセリフを大量に取り入れている。ただし作曲した渡久地は歌舞伎のことはあまり知らず、むしろ当時最新の音楽であったブギウギのリズムを基にして曲を書いた。その軽快なメロディーは大当たりとなり、発売3か月で30万枚、最終的には125万枚を売り上げる大ヒットとなった。

 「粋な黒塀 見越の松に 仇な姿の 洗い髪 死んだ筈だよ お富さん」「生きていたとは お釈迦様でも 知らぬ仏の お富さん」。歌舞伎では、木更津のヤクザのお妾お富さんに横恋慕した与三郎は、密会がバレて全身を切り刻まれ、お富さんは逃げようとして海に飛び込んで死んだと思われていた。しかし生きていて、江戸で質屋の大番頭さんに囲われている。そこに昔のオトコの与三郎が登場するというストーリーであるが、歌舞伎を知らなくても、何も知らない子供までもが歌った。それは言葉のリズムが良かったからであろう。

 「お富さん」は岡晴夫が歌う予定だったが岡晴夫が移籍したため、急遽若手の春日八郎に歌わせたところ大ヒットした。春日は通算21回目の紅白出場を果たし「お富さん」を歌唱した。また平成元年の第40回NHK紅白歌合戦でも「お富さん」を歌唱した。平成3年10月、春日八郎が67歳で亡くなった時、葬儀で参列者全員で「お富さん」を合唱した。この葬儀には竹下登元総理も参列していた。