
青い山脈
終戦後、それまでの軍国主義の重苦しさから解放された喜びを表す作品が次々と生まれた。朝日新聞に連載された石坂洋次郎の小説「青い山脈」もそのひとつで、新生日本を感じさせる明るさで戦後初のベストセラーとなった。
この小説が昭和24年に映画化され、主題歌として歌われたのが「青い山脈」である。発表当初は藤山一郎と奈良光枝がデュエットで歌っていたが、奈良光枝が早世したため、藤山一郎の歌として有名になった。「古いうわぎよ さようなら さみしい夢よ さようなら」この歌詞が示すように、明日への勇気と希望が沸いてくるような曲であった。
「青い山脈」は世代を問わず長年にわたって支持され、発売から40年経った平成元年にNHKが放映した「昭和の歌・心に残る200」において第1位、すなわち戦後歌謡史上最高の人気曲であった。
作曲者の服部良一は、「梅田から省線に乗って、京都に向か満員電車の中のこと。日本晴れの彼方にくっきりと見える六甲山脈の連峰をながめていると、ふとメロディーがわいてきた。すし詰め状態の列車の中で、五線紙に書きとめようとしたが、楽譜など書いていたらヤミ屋から因縁をつけられそうだった。とっさの思いつきで、ハーモニカの番号を書いた。数字で書けば周りの人も、ヤミ屋が計算していると思ったのでしょうね。」と回想している。
青い山脈は5回映画化されているが、第1回目の映画では女教師を原節子、高校生を池部良、女生徒を若山セツコ、杉葉子などが演じていて、第1回目の映画が最も名高い。
この曲を歌った藤山一郎と作曲者の服部良一は共に国民栄誉賞を受賞している。(作詞の西條は国民栄誉賞創設以前に死去している)。また映画の原作者である石坂洋次郎ゆかりの地である横手駅(秋田県)で、発車メロディとして使用している。
1 若くあかるい歌声に
雪崩 は消える 花も咲く
青い山脈 雪割桜
空のはて 今日もわれらの夢を呼ぶ
2 古い上衣よ さようなら
さみしい夢よ さようなら
青い山脈 バラ色雲へ
あこがれの 旅の乙女に鳥も啼く
3 雨にぬれてる焼けあとの
名も無い花もふり仰ぐ
青い山脈 かがやく嶺の
なつかしさ 見れば涙がまたにじむ
4 父も夢見た 母も見た
旅路のはての その涯の
青い山脈 みどりの谷へ
旅をゆく 若いわれらに鐘が鳴る
作詞:西條八十、作曲:服部良一、唄:藤山一郎・奈良光枝