グロフェ「大峡谷」

とてつもない”世界を音楽に

アメリカの大地に広がる自然の神秘「グランド・キャニオン」

その雄大な景観に強く感動したグロフェは音楽でその世界を描こうとした

 

音でつづる グランド・キャニオン

アメリカはアリゾナ州の中央北部に位置する国立公園「グランド・キャニオン」。数千万年をかけて隆起と浸食を繰り返して形成された大峡谷は、まさに大自然の彫刻。およそ460kmもの長さを誇り、世界遺産に登録されています。このグランド・キャニオンの景観を音楽で描いたのが名曲「大峡谷」。作曲したのはアメリカを代表する作曲家ファーディ・グロフェ。彼の最高傑作のひとつです。「大峡谷」は5つの曲からなる組曲。グランド・キャニオンが一日に見せる様々な顔を見事に描いています。雄大な自然をダイナミックにかつ、ユーモアをまじえ描いた音楽、それが組曲「大峡谷」なのです。

 

あのすばらしい 感動をもう一度

グロフェが初めてグランド・キャニオンを見たのは25歳の時。初めて見る壮大な景色にグロフェは大きな衝撃を受けました。20代は当時人気を博した音楽家ポール・ホワイトマン率いるジャズ楽団に加入し、アレンジャーとしてメキメキと頭角をあらわします。やがて、フリーで作曲活動も始めると、グロフェはかつて見たグランド・キャニオンの壮大な世界を描いた組曲「大峡谷」を作曲します。この曲はホワイトマンのジャズ楽団で初演を迎え、コンサートは成功をおさめますが、当のグロフェは満足していませんでした。ジャズ楽団の小編成ではグロフェが思い描くグランド・キャニオンを音楽で表現しきれなかったのです。初演の翌年、グロフェはオーケストラを使って「大峡谷」を演奏する機会を得、改めてオーケストラ版として編曲し直したのです。15年の歳月を経て、ようやくグロフェはあの時の感動を音楽で表現することができたのです。

 

アメリカの大地 ココにあり

組曲「大峡谷」の中で最も有名な曲が「山道を行く」。まさにタイトルどおり山道を歩いている気分になる曲で、なおかつ、随所にアメリカっぽさを感じられるのも大きな特徴です。まず、この曲に欠かせない音が“ロバの足音”。ココナツの殻で作られたココシェルズという楽器でパカパカと鳴らし、ロバが歩く音、ひづめの音を描写しています。このリズミカルで陽気な音によって私たちを一気に山道にいざなってくれます。また、この曲のメロディーにあたるカウボーイが歌っているシーンですが、カントリー風、古き良き時代のアメリカっぽさを感じる音になっています。そのワケにこのメロディーに使われている音階があげられます。このメロディーはヨナ抜き音階といってハ長調でいう4つめのファと7つめのシが抜けた音階になっています。ヨナ抜き音階はさまざまな国の民謡などに使われる音階で郷愁を感じさせてくれます。