ホルスト「木星」


星に願いを

きょうの一曲はホルスト作曲「木星」。

平原綾香さん「Jupiter」でおなじみですね。

この曲が生まれたイギリスでは作曲された直後に歌詞がつき、

今でも大切に歌われています。その理由とは!?

 

時代が求めたメロディー

平原綾香さんの「Jupiter」。「木星」のメロディーに日本語の歌詞がついて大ヒットしましたよね。この曲が生まれたイギリスでも歌詞がついて大切に歌われているんです。この曲が初演された1918年は第1次世界大戦の終戦の年。史上初の世界規模の戦争でした。イギリスは連合国側の中心として多くの兵士を戦場に送りこみます。戦争に勝利したものの、イギリスは多くの犠牲を払いました。死傷者は約300万人と言われています。終戦後間もないこのとき、人々の心を慰めたのが「木星」のメロディーに歌詞がついた歌でした。「失われた祖国への愛」「犠牲になった人への愛」が歌われています。歌は人づてに広まり、終戦の日に行う追悼式でも毎年歌われるようになります。こうして「木星」はイギリス中から愛される曲となったのでした。

 

占星術に魅せられた先生

作曲家グスターヴ・ホルストは1874年、イギリス南部チェルトナムに生まれました。ロンドンの大学で作曲を学んだホルストですが、経済的な事情もあり卒業後は音楽の先生になりました。彼は非常に熱心な先生でした。2、3の学校をかけもちし、さらに夜間部でも授業をする忙しい毎日。授業用の曲も書かなければなりません。そんな生活の中、彼はあるテーマに出会います。それが占星術です。神秘的な題材に強いインスピレーションを得て、ホルストは作曲にとりかかりました。そして2年の歳月をかけてようやく書き上げたのが組曲「惑星」です。現在よく演奏されるオーケストラ版ではなく、“2台のピアノのための曲"として作曲されました。その後オーケストラ版に編曲をして、初演は関係者だけの演奏会で披露されました。すると聴衆に強い印象を与え、大喝采をうけたのでした。学校や生徒のためにたくさんの曲を書いて実力をつけたホルスト。そして自分が本当に書きたいものと出会ったとき、その力は光り輝く音楽となったんですね。

 

名旋律のかくれんぼ

「木星」の有名なメロディーのあたまの“3つの音"=「タララの音型」は曲のあちこちに隠れているんです。

①陽気に登場

曲の前半に登場する快活なメロディー。「タララの音型が」はずんだ陽気な感じで使われています。

②伴奏型で登場

次は曲のいちばん最初の部分。ここでは「タララの音型」が伴奏で登場しています。音程を変えて、入るタイミングをずらして、複数のパートでこの「タララの音型」を重ねています。

③もちろん有名なメロディーにも

そしてもちろん有名なあのメロディーにも!前半部分だけでも5回の「タララの音型」が入っています。