反面教師、ヒットラー

反面教師、ヒットラー
 ヒットラーは600万人のユダヤ人を殺害しただけでなく、精神病や奇形児のドイツ人も多数殺害している。これがヒットラーの優生思想である。平成8年に優生保護法の名称が母体保護法に変わり、優生思想に関する旧条文が全部削除されたのは、このヒットラーの優生思想の完全否定、人間そのものの尊厳を重視したからである。
  このヒットラーから学ぶことがある。それは自国民さえ殺害したヒットラーがなぜドイツの総裁になれたかである。当時のドイツは世界の大恐慌に加え、第一次 世界大戦で敗戦した巨額な賠償金を抱えていた。そのため街には失業者が溢れ、生活苦による不満がみなぎっていた。ヒットラーはこの国民大衆の不満を利用し たのである。国粋主義的、右翼的な考えでドイツ国内の不況をそれまでの政治家の失政と批判し、ドイツを健全にするのは自分であると国民を洗脳したのであ る。ここで重要なのは、ヒットラーは国民洗脳の方法として3つのSを使ったことである。3Sとはスクリーン、スポーツ、セックスである。
  現在の日本を考えてみよう。日本は独裁政治ではないが、日本国民はこの3Sに完全に毒されている。かつての日本人は礼節を重んじ思慮深い民族であった。し かし現在では自己中心主義、拝金主義、享楽主義、このような恥ずかしい民族に成り下がっている。これを日本の国民病と言わずして何と呼べばよいのだろう か。
 この国民病はマスコミがつくった3Sによる国民の愚衆化が原因であろう。すなわちテレビ、雑誌、インターネット、携帯電話などによる国民の愚衆化が日本と日本人を悪くしたと考えられる。情報化時代と言いながら情報洪水に国民は溺れ、しかも子供や青年たちは溺死寸前という病識すら欠如している。
  テレビは軽薄な芸能人の笑いとスキャンダルばかりで重要な問題を提起しない。どうでもよい番組ばかりが多くを占め視聴率を競っている。スポーツ番組、温泉 情報、お笑い番組などよりは、むしろ「日本のあり方」を論じる方が数百倍も大切なのに、この日本をどうするかが論じられることは少ない。長引く不況、氷河 期の就職率、学生の学力低下、少子高齢化、これらにどう対応するかの論争はみられない。また論争はあっても視聴率を狙った劇画的論争ばかりである。真面目 な顔をした不真面目な論争である。
 子供は親や先生の言うことよりも、テレビや雑誌の内容を信じ、自分で考えるべき思考力を失っている。知識だけで知恵がない、屁理屈ばかりで創造性がない。資源のない日本が、技術立国の日本の子供たちがこのようでは、日本はいずれ潰れてしまうであろう。
 昭和の時代の雑誌を読んでみるとその内容は真面目である。また文章が実に上手である。それは廃刊となった朝日ジャーナルばかりでなく、一般の雑誌も同じであった。しかし現在の雑誌は写真ばかりで、軽薄な文章は読んでも何も頭に残らない。
 街では携帯電話を握りしめ、電車に乗れば携帯電話ばかりを見つめている。携帯電話で日本の防衛論をメールしているとは思えない。やはり目の前の享楽である。携帯電話の普及率は60%を越えている。小学生が携帯電話を持つような社会はすでに病的である。
 国民の愚衆化は政府にとっても企業にとっても都合が良いのかもしれない。しかしこのままでは日本はこの国民病に冒されたまま死を待つだけになる。現在、日本は700兆円の国の借金、300兆円の特殊法人の借金がある。国民1人当たり約1000万円の借金を返す当てがどこにあるのだろうか。日本が破産するのは時間の問題である。
 この日本の国民病を治療するためには、この国民病を作ったマスコミが、ヒットラーの3Sを 握っているマスコミが、その責任を自覚し日本を変えるしか方法はないだろう。国の借金、不況、学力低下などの問題を真面目に考え、マスコミはその改善策を 国民に提示してほしい。テレビ、新聞、雑誌が日本社会の改善策を競い合い、この国民病を治療してほしい。たとえその改善策がマスコミによる悪書の追放、焚 書でもかまわない。日本が沈没する前に、日本が破産する前に、日本人が発狂する前に、マスコミはこの国民病を治すためのオピニオンリーダーになってほしい のである。
 日本の将来がどうなるのかはヒットラーの3Sを握っている日本のマスコミ次第である。ヒットラーは健全なドイツ人を洗脳したが、日本のマスコミに期待するのは日本人の汚れた脳をただ普通の脳に戻してほしいだけである。