意外な社名

 インターネットのyahooを知らない者はいないだろうが、その社名の由来を知る者は少ないであろう。yahooは「ガリヴァー旅行記」に登場する、人間に似た愚かな野蛮人のことである。Yahooの開発者がならず者と自称してこの名前をつけたのである。
 Googleは社名を10の100乗を意味する「googol(グーゴル)」にするはずだったが、登録時にスペルを間違えたのである。Googleは情報を扱う検索会社の代名詞になっているが、最初の情報が間違っていたのである。
 日本の社名で面白いのは、飲料水メーカーのサンガリアで、この社名は奥の細道の「国敗れて山河あり」からの引用で、「国破れて サンガリア」「1,2,サンガリア」のフレーズが宣伝になっている。
 キヤノンは観音菩薩のKWANON(カンノン)からCANONになったが、CANONは英語では標準、聖書正典、教会法を意味する言葉である。その他、シャチハタは名古屋城のシャチホコと旗から、シャープはシャープペンシルのヒットから、ロッテは「若きウェルテルの悩み」の主人公の名前からである。
 ヤクルトはエスペラント語でヨーグルトを意味し、花王は顔の石けんから(顔王)、パイロット(水先案内人)万年筆はセーラー万年筆(水夫)に対抗しての命名である。サントリーは赤玉ポートワインの「赤玉すなわち 太陽(サン)」に社長の鳥井(トリイ)を結び付け、カルビーはカルシウムの「カル」と、ビタミンB1の「ビー」を組み合わせた造語である。
 マツダはアジアの人類誕生の神・アフラ・マズダーに由来する。創業者の松田重次郎の姓でもあるが、叡智・理性・調和の神アフラ・マズダーを自動車のシンボルになることを願って名付けられた。ダスキンは英語である「ダストクロス」と「ぞうきん」の「キン」を合わせた社名である。当初は「ゾウキン」の社名になる予定だったが、社員が「嫁が来なくなる」と反対してダスキンとなった。社名はイメージをつくり、社名が売り上げにつながるので、社名はキラキラネーム以上に重要である。
 日本の会社はマツモトキヨシが典型例であるが、多くは創始者の名前に由来する。その中でも石橋正三郎を英語読みにしたブリッジ(橋)ストーン(石)は有名で、また旧社名に由来するものとして、エーザイ(日本衛材)、コクヨ(国誉)、キッセイ薬品(橘生薬品)、イトーヨーカドー (伊藤羊華堂)、SEIKO(精工舎)などがある。
 日本は物作りの国で、100年以上続いている企業が10万社以上ある。もちろん100年以上続いている企業はアメリカや韓国ではゼロ、ヨーロッパでさえ30社にすぎない。大学生が、目先の給料から、外資系の金融会社に就職する風潮があるが、そもそも金を左右に動かす金融商品が富をもたらすはずがない。富をもたらすのは人間の知性と労働だけで、金融商品はただの強欲ゲームである。
 海外で子供達に折り紙を教えると、日本人の手先の器用さがわかるが、器用なだけではないく、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5S能力が日本の経済を支えてきた。飲む、買う、打つが目的の金融商品は日本人の心を汚す博打にすぎない。
 日本は技術伝承の国で、画期的な製品を作ってきた。しかしこの素晴らしい技術が海外にシフトしている。ものづくりを支えた町工場が消滅すれば、あらゆる部門が衰退する可能性がある。伝統ある企業に期待するとともに、歴史の浅い政府にお願いしたいのは、優秀な中小企業の邪魔をしなで、助けてほしいのである。