日本最大の烈女

 ダスティン・ホフマン主役の卒業 (1967年)はまさに青春を代表する映画である。
 ベンジャミンは、大学卒業記念パーティーで幼なじみのエレーンの母親ミセス・ロビンソンと再会する。そこで彼女から思わぬ誘惑を受け、生きる目標を失っていたベンジャミンは夜ごとの逢瀬となった。しかしぬぐい切れない虚無感だけが残った。何も知らない両親は帰郷した幼なじみのエレーンをデートに誘えと説得した。ベンジャミンは一度のデートでわざと振られようとするが、エレーンの一途さに打たれ、二度目のデートを約束する。
 二度目のデート当日、約束の場所に来たのは母親のミセス・ロビンソンだった。母親はエレーンと別れるように迫り、別れないなら自分との情事をバラすと脅した。
 ベンジャミンはエレーンに、かつて話した不倫の相手はあなたの母親だったことを告げる。ショックを受けたエレーンは話も聞かず、ベンジャミンを追い出してしまう。ベンジャミンはエレーンを忘れられず、エレーンに結婚を約束する。しかし揺れる心のエレーンは退学すると、他の男と結婚しようとする。
 ベンジャミンは教会を探し回り、エレーンと新郎が誓いの口づけをする直前にドアを叩き「エレーン、エレーン!」と叫ぶ。ベンジャミンへの愛に気づいたエレーンは「ベーン!」と答え、二人は手を取り合って教会を飛び出した。
この映画「卒業」はダスティン・ホフマンの出世作であり、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」は名曲中の名曲である。
 ここで問題である。日本史の中でこれ以上の、恋愛を演じた人物がいたのである。だれか? それは源頼朝と北条政子である。父・北条時政は平氏を恐れ、流罪人頼朝との仲を裂き、政子を伊豆目代の山木兼隆の元へ嫁がせようとする。ところが政子は輿入れの前夜、屋敷を抜け出すと暗夜をさ迷いながら山を越え、豪雨に打たれながら頼朝の元へと走った。二人は伊豆山神社に匿われ、駆け落ちを果たしたのである。まさに天城越え「誰かに取られるくらいなら、あなたを殺していいですか」である。さすが北条政子である。「卒業」などは北条政子の屁にも及ばないであろう。尼将軍・北条政子は日本最大の烈女である。