ウジェーヌ・ブータン

ウジェーヌ•ブーダン(1824-1898)

 19世紀フランスの画家。ノルマンディーの海岸沿いの街で、セーヌ河口の港町オンフルールに生まれる。船長をやっていた父の子として生まれる。船乗りであった父の船に幼い頃から同乗し海の魅力を知る。1835年に父親が船長をやめて一家をあげてルアーブルに転居する。この地で父親は文房具兼額縁・絵画店を開業して成功した。ブーダンは文房具店で働き、画家見習いとして絵画を学び始め、そこでミレーやトロワイヨンの絵画を扱った為に彼らと出会い絵画の教えを受ける。2年後の1846年からは絵画制作に専念し、1851年にル・アーブ市から奨学金を受け、3年間絵画を学ぶ為にパリへと向かう。ルーヴルで17世紀オランダ絵画の研究をするなど、ほとんど独学で絵画を修得する。パリの暮らしにはあまりなじめないまま帰郷、その後の生涯をノルマンディーの海岸地方で過ごす。
 1858年、当時17-18歳のクロード・モネと出会い、共に戸外で制作活動をおこなう。翌1859年、写実主義の巨匠クールベや高名な詩人ボードレールとオンフルールで知り合い意気投合し、1860年からはパリへとアトリエを移しコロー、ドビーニー、ヨンキントらの画家とも交友を持つようになるほかサロンへも出品し始める。

 印象派(印象主義)の先駆的存在となる風景画家である。戸外での制作で、明瞭な外光表現を用いて、大気の変化や天候の移り変わり、水に反射する光などを軽快な筆触で捉えた。特に海景や浜辺とその周辺の情景を好んで描いた。

 外光派の一人として印象派に影響を与える。実際、ブーダンは第一回印象派展にも出品している。モネをはじめどする印象派との付き合いもあり、モネに屋外で絵を描くことを教えた。考え方によればマネよりも印象派的な作風を持っている。またブーダンはモネに絵画の手ほどきをした最初の師として知られている。モネも後年「私が画家になれたのはブーダンのお陰である」と語っている。青空と白雲の表現に優れ、ボードレールやコローから、「空の王者」としての賛辞を受けている。

 1870年代には、ベルギー・オランダと南フランスを旅し、1892年から1895年にはヴェネツィアに滞在している。パリのサロンへの出展を続け、1889年には金賞を授与され、1892年にはレジオン・ドヌール勲章を受けナイトの称号を得ている。

 1898年にドーヴィルで死去している。

「エトルタの浜辺」は1893年頃よりモネが連作したエトルタをブーダンが描いたものだ。実際、このタッチはほとんビ印象派と言ってもよい。速写的に描かれた浜辺の景色は非常に記録性の高い描写がなされ、当時のエトルタの印象をそのまま写し取っている。ブ-ダンの特徴はこの現実感と記録性にある。

ドーヴィルの海水浴
1865年 | 油彩・画布 | 34.7×57.5cm |

ワシントン・ナショナル・ギャラリー

浜辺の人々
1867-70年 | 油彩・画布 | 38.2×61.2cm |

ワシントン・ナショナル・ギャラリー

嵐模様のカマレ港
1873年 | 油彩・画布 | 79.4×103.5cm |

シカゴ美術館

ル・アーブル港
1885-90年 | 油彩・画布 | 39.8×54.2cm |

ボストン美術館

トゥルーヴィル付近のトゥゲ河
1883年 | 油彩・画布 | 55×74.5cm |

シカゴ美術館

トゥーランゲ岬、カマレ海岸(フィニステール県)
1871年 | 油彩・画布 | 54×90cm |

個人所蔵

トゥルーヴィルの眺め
1864年 | 油彩・画布 | 37×50cm |

リヨン美術館

トゥルーヴィルの海岸
1864年 | 油彩・画布 | 26×48cm |

オルセー美術館(パリ)

トゥルーヴィルの海岸
1865年 | 油彩・画布 | 26.5×40.5cm |

オルセー美術館(パリ)

トゥルーヴィルの浜辺
1869年 | 油彩・画布 | 31×48cm |

オルセー美術館(パリ)

トゥルーヴィルの眺め
1873年 | 油彩・画布 | 31.6×57.8cm |

フィラデルフィア美術館