フランクの「バイオリン・ソナタ」


フランクの「バイオリン・ソナタ」
音楽専門誌による好きなバイオリン独奏曲ランキングで、
バッハ、ベートーベンを押さえて第1位に輝く曲です。
フランクが60歳を過ぎてから作曲したこの作品に込めた思いとは


世界に羽ばたいた結婚祝
フランクのバイオリン・ソナタは、結婚のお祝いにプレゼントされました。プレゼントを受け取ったのは、当時、ヨーロッパ中を熱狂させていたバイオリニスト、イザイ。1886年の夏。フランクは、63歳にして初めてバイオリン・ソナタを作曲します。それを知った友人が、ソナタをイザイの結婚祝にしたいと、フランクに申し出たのです。フランクは「心から喜んで、イザイの結婚祝のプレゼントにしましょう!」と、出来上がったばかりのバイオリン・ソナタを友人にあずけたのでした。イザイは、一目でこの曲を気に入りその場ですぐに演奏。そして「これは私だけのものではありません。全世界への贈り物です。私の役目は全身全霊をささげ、この曲のすばらしさを伝えることです。」とスピーチし、その言葉通り、世界中で、生涯にわたってこの曲を演奏し続けたのです。


究極のお手本
ベルギー東部の都市、リエージュに生まれたフランク。父親は息子を、一流のピアニストに育てひともうけしようと夢見ていました。そんな父親の望み通り、作曲を学び、ピアニストとなったフランクはパリで活動を始めます。しかし、フランクはその生活に耐えられず、父親の元を飛び出します。教会でオルガンを演奏し、個人レッスンや学校で教える事に時間を費やす日々。そんな生活は20年以上続きます。フランクの熱い指導の評判は次第に高まり、若い音楽家が作曲を習いに多く集まってきました。彼らはフランクを、尊敬の念を込めて「天使のような父」と呼びました。そして、フランクは、教え子たちに後押しされる形で作曲に取りかかり、弦楽四重奏曲、交響曲、今日の名曲バイオリン・ソナタなどを作曲します。それは教え子たちにとって、彼の教えが余すことなく詰め込まれた“究極のお手本"でした。
基本が肝心

「究極のお手本」は、基本に忠実にできています。フランクのバイオリン・ソナタは4つの楽章から出来ていますが、第4楽章を取り上げどのようなお手本になっているのかをご紹介します。

作曲の基本

その① 始まりはカノン
第4楽章は、カノンと言う形式で作曲されています。カノンは対位法と言う作曲技法のひとつで、対位法は作曲の基本をなすものです。
その② 終わりはストレット
曲を盛り上げるために使用される技、ストレット。曲の始まりよりも追いかけるメロディーが始まるタイミングを早める作曲技法です