バッハ「ゴールトベルク変奏曲」

数学×音楽=バッハ!

今回の名曲は、バッハの「ゴールトベルク変奏曲」。

アリアと30の変奏からなるこの曲が生まれた時代背景、

そしてこの曲にひそむある数字へのこだわり。

数字とバッハの深い関係にせまります。

 

音楽はみんなのために

1742年、バッハ円熟期に書かれたこの曲は「クラヴィーア練習曲集」という鍵盤楽器の練習曲集の最終巻として発行されたもの。バッハ初の出版楽譜として発売されたこの作品が生まれた背景には、音楽の新時代の到来がありました。18世紀初頭、市民文化の隆盛によって、それまで宮廷か教会に限られていた芸術音楽が、特権階級以外の市民にもひろがっていきます。バッハが活躍するライプチヒの街では、市民オーケストラ「コレギウム・ムジクム」が市民向けに演奏会を行い、バッハも中心人物となってともに活動しました。家庭にもチェンバロなどの楽器が普及しはじめ、ライプチヒには楽譜出版社が誕生。そんな時代のなかでバッハが出版楽譜のために選んだ題材が、チェンバロなど鍵盤楽器の練習曲集でした。先端の演奏技術と今まで培ってきた音楽を凝縮させたこの曲は、バッハの代表作のひとつになりました。

 

3にこめられた思い

この曲には、実はある数字がたくさん潜んでいます。それは「3」。この曲の変奏の数は30。そして3の倍数となる曲は、最後をのぞきすべてカノン形式という特殊な形で作られており、30の変奏は3曲で1セットの構成になっているのです。バッハが3という数字にこだわった理由は、当時の音楽家にとって3は和音・ハーモニーをあらわす特別な数字であったこと。そしてキリスト教では3は三位一体・神を象徴する大切な数字でした。敬虔なクリスチャンであるバッハは「音楽は神へのささげもの」という考えをもっていました。そして3の法則のもとに、すばらしい音楽を作り上げることで、神への信仰心をあらわしたのです。

 

メロディーをさがせ!

変奏とは1つのテーマを変化させるもの。この曲は冒頭のアリアで出てくるテーマを30の変奏で表現します。そのテーマとは、低音部分のとてもシンプルなメロディー。テーマは低音だけでなく高音にジャンプしたり、いくつもの音符の中にひそんでいたりと、バッハは驚くほどさまざまなテクニックを駆使してこの30曲の変奏を作曲しているのです!