ヴェルディ「アイーダ」


ザッツ エンターテインメント!

サッカーの応援歌としてもおなじみ。実は、ある国の国威発揚のため企画されたオペラだった!ヴェルディが曲に込めた大仕掛けとは?オペラ史上に輝くエンターテインメントの魅力に迫る!

歌劇「アイーダ」から 「エジプトとイシスの神に栄光あれ」ほか

オペラ史上最高のスペクタクル

豪華けんらんなセット、時に数百人の歌手やダンサーたちがステージにのぼり、象や馬まで現れるという壮大な歌劇「アイーダ」は、オペラ史上最高のスペクタクルといわれています。実は、「アイーダ」は、エジプトの国家的な事業として企画された歌劇。1869年、地中海と紅海を結ぶスエズ運河が開通し、エジプトが国際社会の中でヨーロッパの列強諸国と肩を並べたことを示そうと、ヨーロッパの名だたる作曲家の作品をカイロのオペラ劇場で初演することを企て、作られたのが「アイーダ」なのです。

 

目指せ!真のエンターテインメント

イタリア北部のパルマ地方に生まれたヴェルディは、26歳でオペラの作曲家としてデビューします。しかし、2作目「一日だけの王様」初演が大失敗。客のブーイングを一身に浴び、その経験から聴衆を喜ばせることの大切さを知ります。当時のオペラは、歌が第一で話は二の次、聴衆は物足りなく感じていました。ヴェルディは、人間の心理を描いたオペラを書こうと、研究を重ねて、人々を熱狂させるオペラを生み出すプロフェッショナルとなったのです。「アイーダ」は彼の集大成と言われる歌劇。多くの聴衆に支持されるエンターテインメント作品となった理由、わかりますよね?

 

びっくり!うれしい!音楽の大仕掛け

ヴェルディは、「アイーダ」を壮大なものにするため、大きな仕掛けをしています。まずは凱旋シーンで活躍するトランペット。「アイーダ」には、“アイーダトランペット"と呼ばれる長いトランペットが使われます。これは、エジプトの要素を盛り込みたいと、ヴェルディがエジプトの壁画をヒントに制作した楽器。そのトランペットのパートを2つに分けて転調させ、メロディーを勇壮で華麗にしています。また、合唱にも、この作品を壮大にする仕掛けが。エジプト軍の勝利を喜ぶ場面では、市民は王を讃える歌を、神官は神に感謝する歌を、つまり別のメロディーと歌詞の歌を同時に歌い、そのアンサンブルによって様々な立場の人がいる「国家」を表現したのです