ロッシーニ「ウィリアム・テル」


この曲を書いたら引退だ!

オペラ「ウィリアム・テル」完成後、37歳で引退した作曲家ロッシーニ。

最後のオペラにこめられた熱いおもてなし心にせまります。

 

永遠のヒーロー!

主人公ウィリアム・テルは架空の人物と言われています。しかしスイス人にとっては、国民の魂といえるほど大切な存在なのです。ウィリアム・テル劇場や礼拝堂などゆかりの場所が各地にあり、学校の授業でも習うとか。そんなウィリアム・テルの伝説は14世紀、オーストリア統治下のスイス・ルツェルン地方が舞台です。悪代官のおきてを破ってしまったテルは、罰として息子の頭上のリンゴに矢を放てと命じられます。テルは必死に命中させますが、これを機に悪代官に目をつけられてしまいます。しかしテルの勇気ある行動に農民たちも一丸となって悪代官に立ち向かいます。テルは、仲間たちに助けられながら勝利を収めました。正義に対してまっすぐ生きたテルの伝説は、今も昔もスイスの人々に誇りを与えているのです。

 

引退の花道!

オペラ「ウィリアム・テル」を書いたのは、イタリアの作曲家ジョアッキーノ・ロッシーニ。喜劇的オペラの天才と呼ばれ「セビリアの理髪師」などヒット作を次々と作曲。パリ・オペラ座と10年契約を結んだロッシーニですが、新作「ウィリアム・テル」を作曲中に突然断筆宣言!37歳の早すぎる引退に世間は驚きました。喜劇ばかりもてはやされ、人気の一方で限界を感じていたロッシーニ。最後に選んだ題材が「ウィリアム・テル」でした。異例の長期間をかけて仕上げた壮大な作品は、民衆を描いたオペラの先駆けとして後世にも大きな影響を与えました。まさに引退の花道を飾るオペラとなったのです。

 

おもてなし序曲!

この作品には序曲からロッシーニの熱いおもてなし心が満載!1曲が四部構成になっています。第一部はチェロアンサンブルのみで独特な静けさを演出。第二部は激しい嵐を描写し、楽器がかけあいを繰り返して盛り上げます。第三部はスイスの牛追い歌を参考にした牧歌的な曲調。そして第四部であの有名なメロディーが登場します。