アンジェロ・モルベッリ

 アンジェロ・モルベッリ(1853-1919年)は象徴主義や未来派に安住することなく、社会の諸問題に深く注目した画家だった。モルベッリはブレラ美術学校でロマン主義的なリアリズムを学び、その視線は主に田畑での労働、困窮する老人たちといった主題に向けられた。反アカデミスムともいうべき分割主義の手法が広まり、モルベッリ自身も個々の色彩を小さな筆触で画面に散りばめ、フランスの点描ではなく線条の筆触で社会的な主題を描いた。絵具の混色や厚塗り技法を組み合わせ、キャンヴァス上に精緻な画面をつくりあげ、その描写は写実性が強く、身近な現実世界、統一後のイタリアが直面した社会問題、あるいは現実から離れた観念的で幻想的世界などを取り上げた。

日曜日の夜明け

1890年

聖書を小脇に抱えた老夫婦が田舎道をミサへ急いでいる。早朝の光が輝きを増し、すべてが清められ、すべてが生まれ変わっていくようである。豊かではないにしても、彼らの厚く素朴な信仰心と、穏やかで清澄な空気が伝わってくる。

たった80チェンテジモのために!

1895年 ヴェルチェッリ、フランチェスコ・ボルゴーニャ財団美術館

 本作品は1890年代の初頭には米価が暴落し、深刻な農業危機が発生して、稼ぎがもともと不安定だった田植え女性たちの生活はいっそう不安定になっていた。本作品はこれら搾取されていた女性たちのメッセージとして受け止められ、社会告発の絵として評判を呼んだ。チェンテジモはリラの100分の1の貨幣単位である。スカートの色や田圃の水の美しさが印象的である。