春の祭典

春の祭典

ストラヴィンスキーが作曲した「春の祭典」はもともとはバレエのために作曲された音楽である。数多くの振付家がこの曲に魅力を感じバレエ作品を作っている。鹿の発情にヒントを得て作成されたというベジャール版、舞台に本物の土を敷き裸足で踊るピナ・バウシュ版などがあり、100以上の振付家が作品を作っている。原点ともいうべきニジンスキー版のバレエ初演は1913年のパリ。革新的な音楽と振付は、当時の観客に衝撃を与えたようです。

 

ニンジスキーの振付は、背中をまるめ、内股で歩くという、クラシックバレエの基本を無視したものだったとか。そして、ストラヴィンスキーの音楽は、これまで聴いたこともないような変拍子と不協和音。それまでの美しいバレエ、クラシック音楽しか知らなかった当時の観客たちは、この舞台に驚き、抗議する者や支持する者で、劇場は乱闘騒ぎまでおこるほどの大混乱になったといわれています。

その場に立ち会っていたストラヴィンスキーは、次のように回想している。

「序奏の最初の数小節が始まっただけで嘲笑が湧いたので、私は憤慨のあまり席を立ってしまった。最初のうちは少なかったが、不愉快な極まる示威は次第に高まり、ついに会場を覆い尽くしてしまった。ところがそれに反対するヤジも多くなって、やがて恐るべき喧嘩に発展した」

 これは実は興行主ディアギレフの策略で、こうなることを予想して、保守的な貴族階級と、新進的な若者、芸術家たちの両方を招待していたとか。このニジンスキー版は、その後、時代とともに忘れられていましたが、最近、いくつかのバレエ団で復刻上演されるようになってきました。

 

見所 有名なのは、やはり、ベジャール版。肌色のレオタードを着た男女がエネルギッシュに踊る舞台は、鹿の発情にヒントを得て振付けたというだけあって、原始的な性のエネルギーと力強さに圧倒されます。

 

最初は、男だけの群れが登場し、力強い動きを見せます。次に登場する女だけの群れは神秘的な感じ。そして、それぞれの群れから男女1名の生贄が選ばれます。生贄を取り囲むように踊る群舞は圧巻です。

 

実は、バレエを見るまで、この曲のよさが良く分かりませんでした。現代曲はよくわからない~って感じで。

 

しかし、ベジャールのバレエをみて、一発でこの曲のもつ春の大地の目覚めや、狂気のイメージが理解できたような気がしました。それ以来、この曲を聞くだけでわくわくするようになり、今ではお気に入りの一曲です。

 

ピナ・バウシュ版も非常に人気が高いようですが、日本ではなかなか観るチャンスはないようです。パリ・オペラ座や、ピナが主催するヴッパタール舞踊団などで上演されます。