ラ・バヤデール

ラ・バヤデール

 ラ・バヤデールはバレエ・ファン以外には馴染みのない演目だが、見所の多いバレエで、インドを舞台としているためエキゾチックな雰囲気が楽しめる。1877年にロシアのレニングラード・キーロフ劇場(現マリインスキー劇場)で初演されたバレエ作品。古代インドの舞姫と戦士ソロルの恋を描く。音楽は「ドン・キホーテ」「パキータ」で知られるオーストリアの作曲家レオン・ミンクス。振付は「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」「ドン・キホーテ」などの数々の名作を手がけたフランス人のマリウス・プティパである。
 ヨーロッパでは長らく上演されることがなかったが、1961年にキーロフ・バレエがロンドン公演で初めて披露し(このときルドルフ・ヌレエフが亡命した)、古代インドを舞台にした西欧人好みのエキゾティシズムで人気を博した。
 初演時は全4幕7場という大作だったが、改訂が重ねられ現在では3幕から4幕で上演されることが多い。神の怒りに触れ寺院が崩壊し全員死亡するという初演時のラストはロシア革命後に省略されている。

 

 1幕

 インドの戦士ソロルが狩りから帰ってくるところから始まる。ソロルは美しいバヤデール(巫女で舞姫)のニキアと愛し合い、二人は寺院の聖なる火に永遠の愛を誓う。大僧正も美しいニキアに目をつけるが、ニキアは大僧正を疎ましく思っている。

 2幕

 領主ラジャは勇敢な若き戦士であるソロルが気に入り、娘ガムザッティの婿になることを申し出る。ソロルは戸惑うが、名誉とガムザッティの美貌に目がくらみ承諾してしまう。これを知った大僧正はソロルを抹殺しようとして、ソロルがニキヤと恋仲である事を領主ラジャに告げ口をする。領主ラジャは大僧正の思惑とは裏腹に、ソロルではなくニキヤを抹殺する事を決意する。

 いっぽうソロルに恋した領主の娘ガムザッティーは大僧正と領主の話しを立ち聞きし、ニキヤを呼び出し「私とソロルが結婚するのだから身をひいて」と迫った。しかしニキヤは結婚を神に誓ったと譲らず、ガムザッティーに刃を向けて拒絶した。領主の娘ガムザッティーは怒りに燃え、侍女に彼女を殺すよう命じる。

3幕

 ソロルとガムザッティーの婚約式の日がやって来た。婚約を祝う宴で、ニキヤはバヤデール(巫女で舞姫)として踊るように命じられ、悲しげに舞う。ソロルから贈られた花かごを喜んで受け取るが、そこにはガムザッティの侍女が毒蛇を仕込んでいた。ニキアは毒蛇にかまれてしまう。そこへ大僧正が解毒剤を差し出し、自分の愛を受け入れるようにニキアに言うが、ニキアは拒絶して息絶える。

 4幕

 悔恨に苦しむソロルに下僕が阿片を差し出す。阿片をすったソロルは夢をみて、精霊たちの間にニキヤを発見する。ニキアを愛していることに気がついたソロルは、二度と裏切らないことを誓う。

 (このソロルの夢のシーンが「影の王国」といわれ、舞台上手から順々に登場する精霊たちのアラベスク・パンシェの繰り返しは非常に美しい。単純な動きの繰り返しであるが、これは時間の永遠を表す)

 5幕

 やがて寺院でソロルとガムザッティの結婚式が行われるが、精霊となったニキヤが現れソロルと踊る。ニキヤとの愛の誓いを破ったソロルに神が怒り、寺院は崩壊して全員が死んでしまい、あの世でニキヤとソロルは永遠に結ばれる。