くるみ割り人形

バレエ「くるみ割り人形」
第1幕
 クリスマス・イブのことである。居間ではクリスマス・パーティーが行われ、たくさんのの招待客で賑わっている。やがて大人のダンスが始まり、少女クララの名付け親のドロッセルマイヤーおじさんは人気者でしたが、突然おじさんは姿を消してしまいました。そして再び登場した時には三角帽子にメガネかけ魔法使いに変身していたのです。

 子供たちは喜んでおじさんを取り囲むと、少女クララはドロッセルマイヤーおじさんから人なつっこい感じのくるみ割り人形をプレゼントされる。クララはこの人形を気に入るが、弟や他の子供たちはこの人形を醜いと笑い壊してしまう。

 パーティーが終わって一度は寝室に入ったものの、気になって夜中にくるみ割り人形が置かれている居間にひとりで戻ってみる。

 するとクリスマスツリーがどんどん大きくなり、巨大なネズミの王様に率いられたねずみの大群が現れ、ツリーに下げてあるクッキーを盗み食い散らかしていった。その時、くるみ割り人形は立ち上がって剣を振り上げ、ネズミと人形たちの戦争が始まった。

 人形たちを率いているのは、クララのあのくるみ割り人形だった。くるみ割り人形は、ネズミの王様に追いつめられるが、くるみ割り人形が危ないと思ったクララが無我夢中で上履きをねずみの王様に投げつけた。上履きはねずみの王様に命中し、王様がひるんだ隙にくるみ割り人形が斬り付けました。王様は倒れ、ねずみ軍は総退却していった。

ネズミの王様にスリッパを投げつけて、くるみ割り人形を助けた。戦いが終わり、ネズミたちが退散してると、クララに助けられたくるみ割り人形が起きあがり王子様に変身する。王子様クララに上履きを返すと、クララの足元にひざまづいて「私は人形の国の王子なのですが、ねずみの魔女の呪いでくるみ割り人形に姿を変えられていたのです。それがクララお嬢様に愛情をかけていただき、ねずみの王様を倒したことで呪いはとけました。何とお礼を申し上げていいかわかりません」

 そしてくるみ割り王子はクララの手をとり、心が通い合った二人はうっとりと踊り始めた(アダージオ)ふと気がつくと二人は粉雪の降るもみの木の林に来ていて、粉雪はいつしか雪の精となって舞い踊りだす(雪の国の踊り)。踊りが終わり雪の精たちが行ってしまうと、くるみ割り王子は「さあ、これから私の国、人形の国へお嬢様をお連れいたします」そう言いうとクララの手をとって歩き始めた。

 

第2幕
 やがて雪はやみ、クララとくるみ割り王子は赤い帆をかけた金の船に乗って湖を進み、樅の木に囲まれた港に着くと、歩いてお菓子の国へやってくる。お菓子の国ではいろんな民族衣装をつけた人形たちが二人を歓迎するために集まっていて、クララを歓迎して様々な踊りを披露する。情熱的なスペインのチョコレートの踊り、妖艶な女性たちのアラビアのコーヒーの踊り、速いテンポで飛び跳ね回る中国のお茶の踊り、元気なロシアの踊り(トレパーク)、そしてあし笛にのって可愛い人形がフランスの踊りを踊る(パ・ド・トロワ)。

 最後に金平糖の精とくるみ割りの王子が、グランパドドゥを踊る。そして全員が参加しての踊り、てプリンセス・クララは高々と持ち上げられ、堂々と美しいポーズを決める。

 夢のような世界を楽しみながら、ふと気がつくとクララは自分の部屋で目を覚まし、すべてが夢だったことに気づくのである。「夢であってもくるみ割りさんと一緒なら、いつだってあの素敵な世界へ行けるわ」クララはくるみ割り人形を抱き上げそう話しかけると、くるみ割り人形がかすかにうなずいたように見えた。

 

 「胡桃割り人形」とは人形の形をしたクルミを割る道具のことである。音楽はチャイコフスキーのバレエ音楽をもとにしており、バレエを知らなくても聞いたことのある有名な曲が多い。原作はドイツ人のホフマンの童話「くるみ割り人形とネズミの王様」で、初演から100年以上たつので多くの改訂版があるが、ワイノーネンの改定版が一般的である。

 クリスマスと言えば「くるみ割り人形」と言われるぐらい12月にはあちらこちらで上演されているが、初演は好評ではなかった。チャイコフスキーの音楽の素晴らしさを認めても、舞台展開と振付があまりにお粗末だったそうである。1934年にワイノーネン版に改定され、踊りが充実して世界的に普及することになる。

 ホフマンの原作は、くるみ割り人形は、主人公クララの名付け親ドロッセルマイヤーのおいが、魔法によってくるみ割り人形にされたのをクララが救うという筋書きである。クララ「人形の国」の話を両親にするも両親は信じない。しかし王子すなわちドロッセルマイヤーのおいが迎えにきて、二人で「人形の国」に旅立つという結末になっている。