絵画善意事件

 スペインのある教会には約100年以上前に描かれた「この人物を見よ」というイエス・キリストの壁画が描かれていた(下左)。この壁画が湿気のせいでぼろぼろと剥げ落ち、徐々に元の姿を失いつつあった(下中)。地元に住む80代の女性セシリア・ヒメネスさんは、これを見て「壁画の劣化を見ているだけで、何もしないで放置なんてできない。修復しよう!」信仰心の強い彼女は塗料と筆を手にするとキリスト壁画の修復作業を開始した。教会の許可もないまま、修復は着々と進められ、修復が完了した時、それを見た人々は凍りついてしまった。「なぜなら、彼女の絵が、恐ろしく下手だったからである」。壁画には元のイエス・キリストの姿はどこにもなく、猿のような生き物が描かれていた(下右)

 地元のカトリック文化財団は、この壁画を描いた画家の子孫から、壁画修復のための寄付金を受け取っていた。つまりプロによる修復が開始される予定だった。80代のヒメネスさんは自分を芸術家だと思いこみ、誰の許可も得ずに今回の行動に至ったのである。教会には多くの人が訪れるので、壁画はいつも公開されていた。見張りの人がいたにもかかわらず、ヒメネスさん修復を終えるまで、誰も彼女がしていることに気づかなかった。

 今後についてカトリック文化財団は、「彼女は善意のもと行った。彼女は修復にどんなものを使ったかをプロの修復者に説明し、修復不可能と判断されたら、壁を壁画の写真で覆うことになる」。このように善意でやったつもりが、思わぬ惨劇を生んでしまった。善意だけが先走ってしまった事件だが、2度と起きないように気をつけることで、今回の女性の善意も少しは報われるであろう。アーメン。

 2012年8月24日、このニュースはNHK「おはよう日本」で紹介されたが、ニュースを読んでいた森本健成アナウンサーが、修復後の絵を見て、笑いをこらえきれず吹き出し、ニュースにならない状態であった。アーメン。