オペラの楽しみ方

オペラの楽しみ方
 オペラに学ぶのは、今も昔も変わらない恋愛事情である。恋の悩みは、今も昔も変わらない。恋愛をテーマにしたオペラは数多いですが、その中でも特にお勧めする4作品をご紹介する。


音楽に描かれる男女の仲の難しさ
 スペインの詩人ノエル・クラロソは「男と女は愛し合うために生まれるが、共に暮らすためには生まれていない」と言いましたが、彼によると、歴史上の有名な恋人たちは常に離れて暮らしていたそうです。このことは、文学や音楽の世界でも言えるようである。
 愛をテーマに作品を生み出してきた作曲家は数知れず、特にロマンチックな恋愛、恋人との精神的、肉体的な絆は永遠のテーマである。例えば、シェークスピアのロミオとジュリエットを基にしたセルゲイ・プロコフィエフやピョートル・チャイコフスキーの作曲は、オーケストラに雄弁に愛を語らせている。

「オルフェオ」
 オペラでは、ほとんどの作品で愛が語られている。史上初のオペラ、オルフェオでは、神話的で超自然的ともいえる舞台で、プラトニックな愛の物語が繰り広げられる。蛇に噛まれて亡くなった妻エウリディーチェを救うために黄泉の国に飛び込んでいくオルフェオは、愛の具現化と言える。彼は完璧な恋人である。オルフェオは、物質的な世界と精神世界、夢と現実、生と死を区別せずに恋人に尽くし、地上世界に戻るまで決して妻エウリディーチェを振り返らないという条件で、ついに妻を救い出す。
 しかしオルフェオは、この条件を守れず、妻を見てしまい、エウリディーチェは霧の中に消えてしまう。この作品は、1607年に、イタリア、マントヴァのカーニバルで上演され、観客に強い感銘を与え、歴史上初のオペラとして語り継がれている。

「ディドとエネアス」
 ヘンリー・パーセルの傑作で、カルタゴの女王ディドとトロイの王子エネアスの恋を描いている。トロイ戦争に敗れ、神の呼びかけにより新しいローマを築くために旅出つ宿命を背負ったエネアスは、漂着したカルタゴでディドと恋に落ちいる。しかし、ディドはローマを目指して出立する恋人との別れに絶望し、最後には死んでしまう。このオペラは、劇的でメランコリックな音楽に彩られ、特に恋人を失ったディドの悲嘆の叫びが心に響く。

「愛の妙薬」
 作曲家ドニゼッティは、「愛の妙薬」で一味違う愛の解釈を披露している。この作品では、愛は喜劇とともに語られるが、恋に落ちたネモリーノが歌うアリア「人知れぬ涙』」はあまりにも有名である。ネモリーノは、好きな人(アディーナ)の心を奪えるという妙薬を騙されて買う。妙薬は、ただのワインだったため、彼は酔っぱらってしまうが、最終的にはアディーナと結ばれる。ネモリーノは知的な人物でも、詩人でもなく、田舎の謙虚な男性で、純粋さとその深い心から愛を語る。パバロッティは、この田舎のロミオともいえる人物を誰よりも上手く表現し、長い間歌い続けました。


「ランメルモールのルチア」
 同じくドニゼッティが作曲したランメルモールのルチア は、ウォルター・スコットの小説「ラマムアの花嫁」が原作、スコットランドを舞台にしたドラマで、恋人同士であるエドガルドとルチアの結ばれない愛を表現している。指輪の交換、決闘、墓地での喧嘩など劇的な出来事に彩られ、最後にはルチアの死を知ったエドガルドが自殺する。「ランメルモールのルチア」は、ドニゼッティの作品中、「愛の妙薬」の次に公演数が多い作品です。ディーバのイメージを裏切り、実際には役中人物と同様に繊細な心の持ち主であったマリア・カラスが、ルチアの一番のはまり役とされている。特に、1955年に、ミラノのスカラ座で、カラジャンの指揮でジュゼッペ・ディ・ステーファノと共演したバージョンは一聴の価値がある。


カルメン/ビゼー 
 スペインで自由奔放に生きる女カルメンと、彼女に心を奪われ、仕事も婚約者も捨てて追いかける衛兵伍長ドン・ホセとの恋愛や葛藤を描いた悲劇。カルメンが男たちを挑発する『ハバネラ』、ホセがカルメンへの愛を歌う『花の歌』、ホセの恋敵となる闘牛士エスカミーリョが歌う『闘牛士の歌』など有名な曲が満載。

椿姫(ラ・トラヴィアータ)/ヴェルディ 
 19世紀、パリの裏社交界。知性的で美しい高級娼婦ヴィオレッタと地方出身の純情な青年アルフレードとの悲恋を描いた。タイトルの「ラ・トラヴィアータ」はイタリア語で「道を踏み外した女」という意味。アルフレードが乾杯の音頭を歌い出す華やかな旋律の『乾杯の歌』、うたげの後、ヴィオレッタが歌う『ああ、そはかの人か』や『花から花へ』などが有名。

トゥーランドット/プッチーニ 
 中国皇帝の娘トゥーランドットとの結婚は3つの謎解きが条件で失敗すれば死が待っていた。カラフは女奴隷リュウが止めるのも聞かず挑戦し成功。結婚を嫌がる娘にカラフは自分の名を当てれば命を差し出すと提案。娘はリュウを追及するがリュウは自害。心をうたれた娘はカラフと結ばれる。

蝶々夫人/プッチーニ 
 長崎の芸者、蝶々さんと米国海軍士官ピンカートンとの結婚と破たんを描いた。ピンカートンが帰ると信じて蝶々夫人が歌う『ある晴れた日に』などが有名。

フィガロの結婚/モーツァルト 
 貴族を庶民の代表フィガロが一泡吹かせるという筋書き。笑いに包まれた喜劇の代表作。「セビリアの理髪師」の続編にあたる。「『恋とはどんなものかしら』はこの演目のなかでも最高の名曲。恋へのあこがれと微妙なときめきを歌わせたら、天才モーツァルトの右に出る者はいない」(大木正純さん)。

魔笛/モーツァルト 
 王子タミーノが鳥刺しのパパゲーノとともに夜の女王の娘パミーナを救う。大人も子どもも楽しめるメルヘン風の物語。あらゆる音楽形式を総合したモーツァルトの傑作。「『夜の女王のアリア』は復讐(ふくしゅう)に燃える女王の怒りを超絶技巧で表現した聴かせどころの多いアリア」

セビリアの理髪師/ロッシーニ 
藤原歌劇団
 セビリアを舞台に町の何でも屋でもある理髪師フィガロの活躍で若い恋人たちが結ばれるまでを描いた喜劇。「フィガロの結婚」の前編。「生き生きした旋律が満載」(石戸谷結子さん)、「フィガロが歌う『私は町の何でも屋』は聴き手の心を沸き立たせる天才ロッシーニが本領発揮したバリトンの名曲」(吉村さん)。

ドン・ジョヴァンニ/モーツァルト 
 好色の貴族ドン・ジョヴァンニが地獄に落ちるまでを描いた。喜劇とも悲劇ともつかない独特のオペラで、二重唱『お手をどうぞ』などが有名。「誘惑はオペラの本質」(堀内修さん)、「甘い二重唱。女性だけでなく、誘惑のテクニックを知りたい男性にもおすすめ」(石戸谷さん)。

ラ・ボエーム/プッチーニ 
メトロポリタン・オペラ
 パリを舞台に詩人ロドルフォら若い芸術家たちの気ままな生活の哀歓を描いた。ロドルフォと恋に落ちる貧しいお針子のミミが自分の身の上を歌った『私の名はミミ』などが有名。「若き詩人と貧しいお針子が恋に落ちる瞬間の心の震えを見事に歌い上げた」(吉村さん)、「アンサンブルが素晴らしい」(関根さん)。

トスカ/プッチーニ 
 脱獄した政治犯をかくまった青年画家カヴァラドッシと、その恋人トスカをめぐる悲劇。トスカへの愛をカヴァラドッシが切々と歌う『星は光りぬ』は「テノールの名曲中の名曲」(中野さん)。悲嘆に暮れたトスカが歌う『歌に生き、恋に生き』は「大判のハンカチが必携。仕事も恋も両方欲しいという女性におすすめ」(石戸谷さん)。