スーラ

ジョルジュ・スーラ(1859年〜1891年)

 19世紀のフランスの画家。スーラの点描画は印象派とは分けられ、新印象派、あるいは点描主義とされている。

 1859年、パリの裕福な家に生まれた。1878年、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学するが、兵役のため1年で学業を中止する。
   スーラは画家を目指してからも、他の画家とは違い、家からの仕送りで生活に困ることはなかった。スーラは上品で落ち着いていてハンサムだった。さらに寡黙で内気な性格であった。
   スーラは自分の画法を研究しつつ、1880年から白黒のデッサンに力を入れるようになる。1883年には、デッサンがサロンに入選し絶賛された。 この時代のスーラの絵はまだ点描画ではないが、次の年の1884年にサロンに落選してから点描で絵を描きはじめた。
   印象派の画家たちは筆触の技法を用いていたが、光学的理論を取り入れた結果、点描技法にたどりついた。点描技法とは線や色をぬって絵画を完成させるのではなく、さまざまな小さな色の点を並べて描くことである。
    スーラは、多くの点を人が見ると、「目の中で色が混ざって見える」という視覚混合の理論を実践したのである。
    パレットの上で絵の具の色を混ぜると色のあざやかさがなくなってしまうので、スーラは原色のまま点でキャンバスにのせた。原色のあざやかな点描画を人が見ると、目の中で色が混じりあって見える。スーラの絵を遠くから見ていると、塗っているように見えるし、人物の輪郭は線で描いているように見える。しかし実際近づいてみると点描でりんかく線はない。現在の液晶テレビと同じ理論である。

 「アニエールの水浴」のためのクロクトン(下絵)は13点が残されている。このようにスーラは作品を仕上げるまでに、多数のデッサンや下絵を制作してている。点描には非常に時間と根気が必要だったが、スーラはていねいに描き続けた。この点描画が、スーラを一気に有名にしが、点描の作品を仕上げるには膨大な時間を要し、また31歳で夭折したため作品の数は少ない。スーラの絵は現代のモダンアートの原点とされる。
   スーラは30歳で結婚して、子供もいたが、このことを自分の親に秘密にしていた。結婚しているのを母親に伝えたのは、亡くなる2日前だった。スーラの画家仲間たちも同様で、結婚して子供がいることを知ったのは、彼の死後だった。スーラは1891年、31歳の若さでこの世をさった。典型的な中産階級の家庭に生まれ、正規の美術教育を受けたスーラは、早世したという点を除いては波乱のない平穏な人生を送った。


グランド・ジャット島の日曜日の午後
1884-1886年 205.7×305.8cm | 油彩・画布 |
シカゴ美術研究所

 ジョルジュ・スーラの代表作である。本作は1885年のアンデパンダン展に出品される予定だったが、同展が中止になり、変更と修正を加え、最後の印象派展となった1886年の第八回印象派展に出品された。1889年以降、枠を外し加筆されたことが知られている。本作に描かれているグランド・ジャット島は、パリ北西、セーヌ河の中央にある細長い島で、夏の余暇を過ごす人々の情景が描かれている。横2mたて3m以上の大きな絵画であるが、全て点で描かれている。おだやかで優雅な様子があざやかに描かれている。輪郭に線があるように描かれているが、近くで見ると線は描かれていない。

 スーラの作品は色彩の美しさと斬新性が特徴であるが、他の印象派の画家たちの作品は躍動感と直感的色彩に満ちているが、スーラの作品には躍動性はなく、内面の心象表現が描かれず、真面目で平面的である。しかしこのことがスーラの特徴であり良さなのだろう。

アニエールの水浴
1883-1884年※1887年に加筆
201×301.5cm | 油彩・画布 |
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

この絵画がサロンに落選したことをきっかけに、スーラは本格的に点描画を描くようになる。この絵ではまだ点描で描いていない。本作に描かれているのは、パリ北西、セーヌ河沿いにあるアニエールの風景で、画面右部分には「グランド・ジャット島」も見える。

ポーズする女たち
1886-1888年 200×250cm | 油彩・画布 |
バーンズ財団美術館(メリオン)

サーカスの客寄せ
1887-1888年 100×150cm | 油彩・画布 |
メトロポリタン美術館

ポール=タン=ベッサンの外港、満潮
1888年 | 油彩・画布 | 67×82cm |
オルセー美術館(パリ)

サーカス
1890-1891年 185.5×152.5cm | 油彩・画布 |
オルセー美術館(パリ)

   31歳の若さで夭折したため、このサーカスはスーラ未完成のままである。黄色と赤を中心とした華やかなサーカスを表現している。スーラが色調のバランスを考えて描いていたかがわかる。

シャユ踊り
1890年 171.5×140.5cm | 油彩・画布 |
クレラー・ミュラー美術館