エイズ妄想殺人事件

【エイズ妄想殺人事件】昭和62年(1987年)

 東京都江東区内の主婦(37)は体調がすぐれず、体重減少と微熱が続くことから、自分がエイズ(後天性免疫不全症候群)にかかっていると思い込んでいた。この事件は、ちょうど神戸でエイズパニックが始まったころのことだった。

 病院で診察を受けたが検査は陰性であった。しかし病院が検査結果を隠していると思い込み、自分だけでなく家族の体調がすぐれないのも、自分がエイズをうつしたためと信じるようになった。

 昭和62年4月30日未明、無理心中を図ろうとして主婦は柳刃包丁を持ち出し、長女(13)、長男(9)を殺害、夫(37)にも重傷を負わせた。この主婦に対し、村上光鵄裁判長は、「身勝手で無残極まる犯行だが、当時被告はエイズに感染したという妄想に取りつかれ、心神耗弱状態にあった」と述べ、懲役8年の求刑に対し、懲役5年の実刑判決を言い渡した。